国際情勢と経済戦略

戦略的立場を方針としています。世界一流の専門家たちの分析は・・英文情報で国際情勢・軍事と世界・日本経済の解説記事を紹介します。
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2015年02月

ロシアとエジプト、バーレーン、スンニ派政権

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2014年8月、黒海に面した港ソチでの歓迎式典に出席したエジプトのシーシ大統領とプーチン。誘導ミサイル巡洋艦で行われた。(“What's behind Russia's Mideast strategy?” Al-monitor, November 30, 2014)


【◆◆以下は、有料メルマガ2月12日号の第3節で、第2節「プーチンの地中海・中東戦略」の各論にあたるものです


   【3】 ロシアとエジプト、バーレーン、スンニ派政権


トルコについては有料メルマガ1月22日号ですでにお伝えしました(『ロシアとトルコ:中東と地中海への布石』)。これまでのパイプライン計画を見直し、中東と欧州圏を結ぶ位置にあるトルコを経由させるように変更することによって、トルコをロシアに取り込もうという策略です。

ロシアとトルコ:中東と地中海への布石─プーチンの欧州への策略―
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39245447.html

今回の記事では、第2節であげた中東と北アフリカの国の中からエジプトやバーレーンとロシア、そしてこれらの地域のスンニ派政権の国家とロシアの関係を取り上げた記事を見てみたいと思います。

米国のシンクタンクからもリンクされる中東専門のウェブサイト『アル-モニター』から、マキシム A. スチコフ氏の記事を取り上げます。

What's behind Russia's Mideast strategy? (「ロシアの中東戦略の背後に何があるのか?」 2014/11/30 アル-モニター)
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2014/11/russia-mideast-strategy-behind-scenes.html

この記事では、近年ロシアは、米国の同盟国であるエジプトとバーレーンとの関係を強化してきたと言っています。


     ■ エジプト


ロシアによる武器と弾薬のセールスは約20億ドルに達し、2014年6月に就任したシーシ大統領は、最初の外国への訪問先として8月にモスクワを訪れました。

またプーチン大統領は、2月9日から2日間、今年初めての外国訪問をエジプトからスタートしました。プーチンはシーシ大統領が国防相であった時から関係強化を推進し、外務・防衛閣僚協議(2プラス2)も開き、軍事分野での協力推進で一致しています(日経 2014/2/14)。

また、ロシアとエジプトは、自由貿易圏を創設する可能性について調査しており、これは2014年8月のプーチンとシーシ大統領の会談の際に明らかにされています。

ロシアとエジプト 自由貿易圏創設の可能性を調査 (2014/08/13 ロシアの声)
http://japanese.ruvr.ru/news/2014_08_13/roshia-ejiputo-keizai/

今月2月の首脳会談では、「軍事や経済分野で関係強化を図る包括的な協定を締結し、エジプトの原発建設計画をロシアが支援することでも合意し」、「ロシア製兵器の売却などが協議された」そうです。

露エジプト首脳:包括的協定を締結…対「イスラム国」など (2015/02/11 毎日新聞)
http://mainichi.jp/select/news/20150211k0000m030114000c.html

前述のエジプトとロシアの関係を扱った『アル-モニター』の記事の執筆者は、マキシム A. スチコフ氏ですが、この人はロシアの戦略問題研究所(Institute for Strategic Studies)の研究員で、『アル-モニター』のほかカーネギー・モスクワセンターの“Eurasia Outlook”にも寄稿しています。

そのスチコフ氏は2014年8月にシーシ大統領が就任後の最初の外国への訪問先としてロシアを選んだ事は、「エジプトはワシントン以外へ向かうことにするという、米国当局への明快なメッセージである」と指摘しています。

Earlier in February, after seizing power in a coup, Sisi traveled to Russia as his first choice in foreign destinations — a clear message to US authorities that Egypt has “places to go” besides Washington.

これは、2013年7月のエジプトのクーデターの後に溝が深まった米国とエジプトの関係悪化をプーチンが好機と見て、米国の影響力を侵食しているのです。


    ■ バーレーンと中東のスンニ派政権


スチコフ氏は、長年米国の同盟国として忠誠心が厚く、アメリカ第5艦隊の司令部が置かれているバーレーンがロシアとの関係を強化しているのは、とりわけ興味深いと言っています。


現在の経済的束縛のもとで、ロシアは新しい収入源を考慮しており、それゆえバーレーンをペルシャ湾岸での重要なパートナーとして考える。2国間の課題(スケジュール)は、エネルギー、投資、そして金融部門が主役となる。(訳注:バーレーンはドバイ、カタールに次ぐ中東の金融センターでもあります)

2014年10月に、プーチンとバーレーンの国王がロシアのソチで会談した後、主要な航空会社であるバーレーン・ガルフ航空とともに初めての直通便を開設した。
それは、ロシアに対する米国主導の制裁の影響を受ける恐れがあるにも関わらずに行われた。

(“What's behind Russia's Mideast strategy?”「ロシアの中東戦略の背後に何があるのか?」)



そしてスチコフ氏は、中東のスンニ派政権とロシアの政策について次のように述べています。

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ロシアはイランと協力関係を持つところからその政策を「親シーア派」と評価されることが多いが、ロシアのイスラム教徒の圧倒的多数はスンニ派である。実際、ロシア国内の一部のイスラム教指導者たちはロシアの中東政策に懸念を表明した。この問題についてロシア政府は真剣に受け止め、これを考慮に入れなければいけない。

それゆえ、エジプト(スンニ派)やバーレーンとパレスチナのスンニ派指導部と協力することは、ロシアの政治的・経済的領域を拡大するだけでなく、ロシア国内のイスラム政治団体からのロシア政権への支持を強固にするのに役立つ。パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス大統領(PLO議長を兼任)は北コーカサスを二度訪問している。

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ロシアとトルコ:中東と地中海への布石─プーチンの欧州への策略―

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トルコのエルドアン大統領とプーチン(2012年12月 BBC )


【◆◆以下の記事は有料メルマガ1月22号の一部です】


 
   【2ロシアとトルコ:中東と地中海への布石


       ─プーチンの欧州への策略― 


 
米国のシンクタンクからもリンクされる中東専門ウェブサイト『アル-モニター』は、昨年1210日の記事のタイトルで「ロシアは中東政策を強化する」と見出しを打ちました。


経済と財政の面からは八方塞がりな状況が伝えられるプーチン大統領ですが、その動きをいろいろと追って見ていくと、確かに中東での動きが目立つように思えます。


また、ロシアの南下政策は17世紀から始まりますが、黒海のさらに南の海域である地中海、このあたりにもプーチンのターゲットがあります。もともとロシアの南下政策には地中海が含まれます。


この地中海の沿岸国であり中東の北に位置し、中東と欧州圏を結ぶ位置にあるトルコへ、先月12月にプーチンが行動を起こし、欧州を驚かせています。このことは、日本のニュースではほとんど話題になりませんでした。



201412月初旬、ロシアのウラジミール・プーチン大統領がトルコを訪問した。その際、当地で会見し、黒海経由のパイプライン「サウス・ストリーム(SS)」プロジェクトについて突如、計画中止を表明。それに代わり、トルコ向けパイプライン計画の構想をぶち上げた。


ロシア=サウス・ストリーム撤回で混沌とするパイプライン網再編 1/07-2015 リム情報開発)




2つのパイプラインを示した下記URLの地図を参考にしてもらえれば、プーチンが行った策略の優れた点が理解してもらえると思います(201212月の『ロシア・ツゥデイ』から)。


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地図とパイプライン:「サウス・ストリーム」と「ブルー・ストリーム」http://rt.com/files/business/news/russia-south-stream-launch-506/i2890c46e006a0865b663c2914fa60c2a_south_stream.jpg
 
元記事:Gazpromand partners kick off construction of South Stream pipeline
 
地図とパイプラインを示した上記URLの図を見てください。プーチンはトルコを経由せずに黒海を経由して天然ガスを送るパイプライン「サウス・ストリーム」を中止しました。そして意図的にトルコを経由する「ブルー・ストリーム」へ計画を変更したのです。
 
このトルコでのパイプラインの中止と変更は、欧州の指導者を驚かせ、シンクタンクの専門家たちが注目しています。その中から米国のブルッキングス研究所のフィオーナ・ヒル氏の書いた記事が、プーチンの狙いと効果を分かりやすく解説していると思うので挙げておきます。
 
Putin’sTurkish and Indian Gambits 12/12-2014 ブルッキングス研究所)
 
この記事の中でヒル氏は、プーチンは「サウス・ストリーム」を生贄にしてトルコに大きな「利」を与えたと言っています。それによりNATOには加盟しているが、EUへの加盟はなかなか申請の受け入れがしてもらえないトルコを、ロシアが取り込もうというのです(「サウス・ストリーム」は経営上の問題も抱えていました)。
 
「トルコは、欧州と中東を結ぶ重要なエネルギーの貿易中継地(ハブ)になりたいという強い願望を持っている」
 
InTurkey, Russia already has a gas export pipeline in place that can be expanded;and Turkey, itself, has aspirations to become a major energy trading hubbetween Europe and the Middle East.
 
現在、EUはウクライナ危機を受け、エネルギーのロシア依存からの脱却に向けた模索をしています。2014年5月に発表した脱ロシア依存に向けたエネルギー安全保障戦略では、中長期的にカスピ海沿岸と欧州を結ぶパイプラインの建設を急ぐことにしていました(下記記事参照)。
 
欧州委がエネルギー安全保障戦略を発表、ロシア依存脱却を加速 6/02-2014 FBC)
 
しかし、トルコがロシアに取り込まれれば、黒海はロシアの黒海艦隊が押さえているので、カスピ海沿岸と欧州を結ぶパイプラインを阻止することができます。このことは地図で確認してもらえればと思います。
 
以下のURLの地図は、中東やカスピ海からトルコへ入り込む計画中のパイプラインの数々を示しています。そのパイプラインのガスやそのほかの石油はトルコや地中海を経由して欧州へ運ばれるのですが、そこを押さえてしまおうというのがプーチンの策略なのです。<※ この点については有料メルマガ2月12号で、さらに大きな視点で解説しました。>

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元記事:TURKEYPUSHES CROSSROADS POLITICS 2013-11/25


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朝鮮半島統一を描く米韓とロシア

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※ 今後プーチンは、南北の朝鮮半島統一を目標に金正恩を説得していくと思われます。

有料メルマガ1月22日号の「朝鮮半島統一を描く米国と韓国」を掲載します。1月23日付けハンギョレ新聞の以下の報道と併せてお読みください。



南北首脳会談の手配に積極的なロシア (1月23日 ハンギョレ新聞)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20150123-00019419-hankyoreh-kr

ロシア共産党機関紙プラウダは1月20日、「プーチンにはいかに南北を和解させるかについてプランがある」とのタイトルの記事で、「米国は北朝鮮に新たな制裁を加えるが、プーチン大統領は南北首脳会談を準備している」と報じた。

さらに「プーチンが平和のための仲裁者に」なり、「もしプーチンの“ミッション”が成功すれば、ロシアの国際的な地位が高まるだけでなく、朝鮮半島統一の礎となるという点で、西側にはダブルパンチになるだろう」と付け加えた。

(上記URLの記事の一部を要約)



【◆◆以下は有料メルマガ1月22日号の一部です】


    【1】 朝鮮半島統一を描く米国と韓国

        ─北朝鮮のこの先を135名の専門家が予測―


昨年12月10日に、米国の戦略国際問題研究所(CSIS)と韓国の東アジア研究所(EAI)が共同で組織する「CSIS-EAI 朝鮮統一会議」によるフォーラムが開催されました。その時の国務次官補ダニエル・ラッセル氏の演説が国務省のHPに掲載されています。これを読むとオバマ政権での国務省は南北朝鮮の統一を視野に入れ、その方向で北朝鮮への政策を考えていることがうかがえます。

CSIS Korean Unification Conference (12/10-2014 米国国務省)
http://www.state.gov/p/eap/rls/rm/2014/12/234944.htm

2014年2月に出版された米ハドソン研究所首席研究員の日高義樹氏の著作レポートによれば(※注-1)、米国陸軍とCIAには、北朝鮮と韓国は統一・合併すると見る分析官が多くなっているといいます。政治状況が現状のようであるにも関わらず、統一・合併の方向に向かうと見ているのです。

フォーリン・アフェアーズ日本版では昨年の7月号の広告ページで、元CIA上席分析官のスー・ミ・テリー氏が、「朝鮮半島統一の恩恵に目を向けよ」という主張をしているのを見ました。

北朝鮮の崩壊を恐れるな―リスクを上回る半島統一の恩恵に目を向けよ (フォーリン・アフェアーズ日本版 2014年7月号)
http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/201407/Terry.htm

この問題について戦略国際問題研究所(CSIS)は、2014年11月に朝鮮半島の南北統一とその将来に関する調査レポートを公開しています。それは、7つの国と地域からなる、135名の北朝鮮と安全保障の専門家たちへの質問調査の結果のレポートです。

The Future of North Korea (11/04-2014 戦略国際問題研究所 PDFファイル)
http://csis.org/publication/future-north-korea

調査は2014年の5〜6月にかけてで、報告者はキム・ソンハン氏。キム・ソンハン氏は高麗大学大学院教授でイルミン国際関係研究院の理事長です。

以下はこの調査記事の一部の抄訳です。


(抄訳開始)

金正恩政権の耐久性について最もよく見られた回答は一様に5〜10年で、これは韓国の専門家の40.8%、韓国以外の専門家の37.2%がそう見ている。その一方ですべての回答者の33.3%が、正恩政権は10〜20年間存続するだろうと答えた。

しかしながら調査結果によれば、今後3〜5年の間の直近の将来の北朝鮮の国内政治は、国内の不安定化の高まりや体制の崩壊(35.5%)よりも、金正恩体制の強化が特徴づけられる(48.1%)。

専門家の過半数が、もし金正恩体制が崩壊するならば、その失脚は経済的失敗(27.4%)や人々の反乱(3%)よりはむしろ、おそらく指導部内での権力闘争の結果(64.4%)であるだろうと回答した。その権力闘争は最終的な政権の崩壊の中での極まりから支配層の間で起こることが予想されている。

中国の専門家でさえ体制崩壊の原因として、指導部内での権力闘争(50%)は経済的失敗(33%)よりも、より起こり得ると予測した。

核兵器計画についての北朝鮮の戦略の質問に応えて、回答者の95.6%のすべてが、核兵器での北朝鮮の譲歩(敗北)の可能性について悲観的であった。北朝鮮は継続的に核戦力を強化するだろうと51.9%が答え、核戦力を維持する一方で核について開かれた話し合いに応じるだろうと答えたものが43.7%いた。

「豊富な鉱脈」としての朝鮮の統一について、回答者たちは北朝鮮の崩壊を通しての統一(31.1%)よりも、北朝鮮と韓国の間の協定を通しての統一が(60%)より望ましいと答えた。このことは、もし統一が北朝鮮の崩壊を通して達成されるならば、南北朝鮮の統一は相当困難な仕事であるかもしれないという事を示唆している。

回答者の68.1%が「北朝鮮政府による統一への反対」が朝鮮統一への最大の障害だろうと答え、16.3%が「韓国政府の不十分な準備」を2番目の統一への障害と答えた。これは、もし韓国に適切な準備ができていなければ、統一のプロセスは相当な難題と困難に直面する恐れがあるという懸念を示している。

とくに、中国の専門家では25%の回答者が「韓国政府による不十分な準備」を選び、これは韓国の専門家が20.4%の割合でそれを選んだのに比べより大きな割合を占めた。このことは、統一が起きるとき、韓国がしっかりと準備できていないために、北京に著しい重荷が降りかかるシナリオを中国が心配していることを示唆している。

(抄訳終了)


2014年10月に米国と韓国の間で、有事の際の作戦統制権を在韓米軍から韓国軍に移す時期が、予定の2015年12月から延期になりました。その理由は核・ミサイル開発を続ける北朝鮮の軍事力に対応する能力が、韓国に十分に備わっていないということでした。

しかし、キム・ソンハン氏の135名の専門家から調査したレポートが示すように、北朝鮮の指導部内での権力闘争、そして国内の不安定化の高まりや体制の崩壊といった予測を考慮して、有事の際の作戦統制権の移管が延期されているという理由もあると思います。

2014年9月4日にワシントンのCSISの本部では、米韓両国のシンクタンクによる2日間の会議『新しい時代での朝鮮の統一』(“Korean Unification in a New Era”)が行われました。この時の議事録が12月1日にネット公開されています。

Korean Unification in a New Era (12/01-2014 戦略国際問題研究所 PDFファイル)
http://csis.org/publication/korean-unification-new-era

私はまだ、この長い議事録のはじめの方をざっとしか目を通していないのですが、南北朝鮮の統一が大きな経済・投資効果をもたらすことがかなりの分量で、会議の出席者たちによって述べられています。

また、「ロシアは朝鮮統一のなかで重要な役割を演じるプレーヤーになるだろう」とも言っています。「エネルギーや輸送、とくに鉄道とインフラ基盤などの分野での潜在的な共同パートナーであることができる」と述べています。


■ ※ 注-1 『アメリカの大変化を知らない日本人』 第5章 2016年、アジア大混乱が始まる(日高義樹著 2014.3.10刊 PHP研究所)


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イスラエルとサウジの軍事協力の可能性 / 終わらない米国の5つの戦争

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【◆◆以下の記事は有料メルマガ1月8日号の一部です】


【目次】(※ 一部)
【序】 日本とペルシャ湾での中東冷戦
【1】 イスラエルとサウジの軍事協力の可能性
【付】 終わらない米国の5つの戦争


    【序】 日本とペルシャ湾での中東冷戦


昨年10月まではロシアのプーチンの戦略について書くことが多かったのですが、原油下落にともなうプーチンの勢いが鎮まるにつれ、中東地域で「イスラム国」以外で、サウジとイランの「新中東冷戦」の緊迫化が目立ってきています。
とくにサウジ政権を取り囲む国内外の中東情勢は、世界の原油価格や私たちの暮らしに大きく関わってきます。

キッシンジャー氏などは、中東の現状においては「イスラム国」よりもイランの方がより重大で困難な問題であると言っています。また戦略国際問題研究所(CSIS)のアンソニー・コーデスマン氏は先月12月の長編レポートのなかで、中東での紛争国とそれに関わるテロ組織のすべてのなかで、イランの問題が一番重要だと言っています。

私は日頃、戦略国際問題研究所(CSIS)の中東地域の新着記事の題名にはなるべく目を通すようにしていましたが、11月からイランとサウジが対峙するペルシャ湾をはさんだ軍事的リスクに関するレポートがいくつか出てくるようになりました。

(「新中東冷戦」という語はブルッキングス研究所のグレゴリー・ゴーズ氏が、2013年7月ぐらいの記事から使っています。)

中東地域、とくにペルシャ湾をはさんだ戦争リスクでは、我が国では安倍政権が集団的自衛権の容認を推し進めようとしているので、米国から協力しろとかなりの圧力をかけられるようになると思います。


    【1】 イスラエルとサウジの軍事協力の可能性


サウジをはじめとする湾岸諸国が、米国のオバマ政権に非常な懐疑心や不満をもっていることは、昨年12月25日号のメルマガでお伝えしました。

とくにサウジは、中東での米国の軍事力とそのプレゼンスが弱まることからくる、イランや「イスラム国」に対しての非常な脅威を持っています。

イランに対してはイスラエルも核兵器開発への脅威を持っていますが、イスラエルは、サウジとイランが起こすペルシャ湾岸地帯の軍事的リスクの高まりを非常に注視しています。

昨年12月2日に行われたワシントン中東政策研究所のディスカッションで、イスラエルのイタマ−ル・ラビノビチ元駐米大使が、次のように言っています。

『イスラエルにとっての前向きな、先を見越した選択肢の一つは、湾岸諸国をふくむスンニ派の国々と戦略的なパートナーシップを築くことかもしれない』

ラビノビチ元駐米大使は、「サウジとカタールは、とくにイスラエルとの協力に前向きである」という意見を述べています。

Rabinovich, … One proactive option for Israel moving forward may be to form strategic partnerships with Sunni Muslim states, including those in the Gulf. Rabinovich expressed his belief that the Saudis and Qataris, in particular, would be willing to cooperate with Israel.

Israel's Geostrategic Position at a Time of Regional Instability (12/2-2014 ワシントン中東政策研究所)  
http://www.washingtoninstitute.org/policy-analysis/view/2014-scholar-statesman-award-dinner

ラビノビチ元駐米大使が提示したイスラエルのこの戦略的オプションは、サウジなどスンニ派諸国がもつ、米国に対する信頼感の低下から生まれるニーズを戦略に活用しようとするものです。
この記事の中では、その報告者がこう述べています。

『ISIS、イラン、そしてムスリム同胞団という共通の脅威を考えると、イスラエルと湾岸諸国は、これまでにかなりの目立たない協力をしてきた。しかし、これを率直で継続していくパートナーシップに変えることができるかどうかは現時点では不明である』

このイスラエルとサウジを軸とした協力体制の構想は2013年にはもうあったそうで、ブルッキングス研究所のブルース・リーデル氏が、2013年11月の記事で取り上げています。リーデル氏は、CIAや国家安全保障会議(NSC)のスタッフを長年務めた中東と南アジアの専門家です。


リーデル氏によると、イスラエルとサウジには、お互いの敵に対して暗黙に内密な協力をしてきた長い歴史があるそうです。しかし、2013年11月時点ではサウジは、それ以上のどんな関心も持っていないと彼は見ていました。

リーデル氏の結論はこうでした。


・・・しかし、両国(イスラエルとサウジ)がもつイランへの嫌悪と米国への苛立たしさは、ユダヤ人の国とサウド王国のあいだの、より接近した関係の前兆にはおそらくならない。イスラエルはより接近した関係を歓迎する。しかしサウジアラビア人はイスラエルを信用していない。サウジアラビア人はパレスチナ人の権利を支持し、イスラエルの核プログラムが取り除かれるのを見るのを望んでいる。



しかしながら、リーデル氏のこの見解は2013年11月のもので、それから1年余りたった現在、イランにしてもISISにしても、サウジにとって脅威の状況は少しも改善されていません。とくに昨年11月以降の戦略国際問題研究所(CSIS)は、イランによるスンニ派湾岸諸国への脅威が、よりいっそう増大していることをいくつかの報告書で伝えています。


    ■ 終わらない米国の5つの戦争


現在アメリカは、アフガニスタン、ISIS、イラク、シリア、イエメンと「アラビア半島のアルカイダ」というように『5つの進化している戦争』に参加しています。

戦略国際問題研究所の幹部であり、広範な軍事問題の研究と地域的には中東と中国の専門家として知られるアンソニー・コーデスマン氏は、これら5つの戦争について次のように述べています。

『米国が撤退し負けることを選ばない限り、これら5つの戦争のどれもが、次の米国の大統領が就任する時までに、終わっている見込みはほとんどない』

The Obama Administration: From Ending Two Wars to Engagement in Five – with the Risk of a Sixth (12/03-2014 戦略国際問題研究所)
http://csis.org/publication/obama-administration-ending-two-wars-engagement-five-risk-sixth


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プーチンはいつ再び武力を行使するか

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相変わらずプーチンが強気な行動を続けています。

焦点:強気姿勢崩さぬプーチン大統領、ウクライナ情勢緊迫で思惑も (1/29-2015 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jpRussia/idJPKBN0L20S220150129?sp=true

有料メルマガ1月22日号でお伝えしましたが、現在のプーチンはウクライナ問題と自国経済の悪化のなかで、中東地域と地中海への戦略・政策へも力を入れています。それが目立ち始めたのは昨年の11〜12月のようです。2014年のアジアシフトからの更なるシフトです。


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    【2】 プーチンはいつ再び武力を行使するか


※ この節はメルマガ12月11号の、『プーチンは経済成長を捨てて侵略する選択を』の続編にあたります。
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39183999.html(ブログ版)


大幅な原油下落で経済的な苦境にたっているロシアのプーチンは、いったい何を考えて行動しているのでしょう。
海外のアナリストには、プーチンのいまの最悪な状態がこのまま続くと見る人もいれば、現状打破の手段として武力行使に出てくると見るアナリストもいます。私はプーチンという政治指導者の資質と性格から後者の見方をとっています。

後者のアナリストのなかには、ロシア経済の悪化が深まるなかで、プーチンが軍事力を行使して権力の延命を計るのはいつぐらいの時期かに言及している人もいます。

戦略国際問題研究所のアンドリュー・クチンス氏は、CNNへの寄稿記事でこう言います。

『プーチンより前のロシアの指導者ミハイル・ゴルバチョフとボリス・エリツィンが、主に国家経済の経済的困窮という結果で最後には不人気になったのと全く同じように、長期にわたる経済の下降は、クリミア併合の強い高揚感の後の現在の人気の高まりを深くむしばんで(侵食して)いくだろう』

Will economy be Putin's downfall? (12/07-2014 CNN)
http://edition.cnn.com/2014/12/07/opinion/kuchins-putin-economy-problems/

この指摘から、いまのプーチンの高い支持率は(伝えられるところでは80%)、<領土拡大の興奮>からまだ国民が覚めていない部分が大きいことがうかがえます。

クチンス氏は記事の最後の方でこう言います。


プーチンが2012年に大統領に戻った時、ほとんどのロシア人と海外の観測筋は、彼の任期は少なくとももう12年続くことを(2024年まで)あきらめて観念したように見えた。しかし、現在の状況では、最近の出来事が2018年の彼の再選に疑問を投げかけるだけでなく、もし経済的下降が続くならば、2016年に予定されているロシアの国会議員選挙はそのシステムをぐらつかせるだろう(訳注:ロシア下院選挙)。

ロシアの歴史を学ぶ学生なら誰でも、ロシアの進路はしばしば非直線的な出来事によって妨害されるという事を知っている。そして現在、もうひとつの出来事が(訳注:侵略)この先数年後に起こるだろうという危険性が、ますますあるように見える。

When Putin returned to the presidency in 2012, most Russians and outside observers seemed resigned to at least another 12 years of his leadership, through 2024. But as things stand, not only do recent events call his re-election in 2018 into question, but if economic decline continues, the Duma elections scheduled for 2016 could shake the system.

Any student of Russian history knows that Russia's path is frequently disrupted by nonlinear events, and today it appears increasingly possible that another could happen even in the next few years.



ロシア大統領の任期についてウィキペディアの説明を引用しておきます(大統領の連続3期の任期は法律で禁じられています)。

「2008年の憲法改正により、今任期から連邦大統領職の任期が6年となったため、任期満了は2018年となる。また、仮に次期大統領選挙に出馬・再選された場合には、2024年まで在任することになる」


CNN記事の上記の箇所のように、クチンス氏は2018年の次期大統領選挙の前にプーチンが武力行使にでてくるだろうと予測しています。
これに対してアメリカン・エンタープライズ研究所のマイケル・オースリン氏は、ロシア経済の悪化が深まれば、それにより2015年がプーチン政権にとって危険な年になるので、そうすれば今年中にも軍事力行使を行うだろうと示唆しています。

Russian Caveat (12/23-2014 アメリカン・エンタープライズ研究所)
http://www.aei.org/publication/russian-caveat/

そしてオースリン氏は、経済悪化につれて起こる反政府的騒乱や暴動に対しては、厳重な取り締まりを強化するだろうとも言っています。


■ 関連リンク
プーチンは経済成長を捨てて侵略する選択を (12/11-2014 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39183999.html

プーチンは停戦を遵守するかー「ノヴォロシア」の復興ー (10/09-2014 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39109236.html



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張 良

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執筆予定 2019.8.20 記
『国際情勢の英文サイトを 仕事の片手間に読むテクニック』

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