国際情勢と経済戦略

戦略的立場を方針としています。世界一流の専門家たちの分析は・・英文情報で国際情勢・軍事と世界・日本経済の解説記事を紹介します。
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2014年07月

北海道を狙うプーチンと中ロの秘密同盟

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米海軍研究所機関誌『プロシーディングス』は次のように伝えています。

「2020年までにプーチン大統領は空母を数隻、揚陸用空母を2隻、ウラジオストックに配備し、日本と軍事対決する。経済利権を確保するため北方領土を維持し、日本には返さない」

これは6月21日に発売された日高義樹著『「オバマの嘘」を知らない日本人』の第3章「プーチン大統領は北方領土を返さない」の見出しの横からの引用です。

日高氏はすでに2013年11月の著作レポートでロシアによる太平洋での潜水艦隊の増強について取り上げ、その主な背景の一つを次のように説明しています。

「ベーリング海は北極海の一部で、温暖化現象で北極海の氷が解け始めるようになってから注目されている。米国海軍の首脳は、「ベーリング海はこれからアジアからヨーロッパなどへの、マラッカ海峡に匹敵する重要な海上ルートの拠点になる」と言っている。」(『アメリカはいつまで日本を守るか』第6章)

プーチンは北極圏に埋蔵する豊富なエネルギー資源とともに、この先マラッカ海峡ルートに匹敵するとされるこの重要な北極海上輸送ルートを確保するため、極東太平洋艦隊の強化に乗り出しています。
日本海を経由する北極海上輸送ルートは、日本、韓国、中国、台湾、そして南シナ海のASEAN諸国へのエネルギー消費地帯・貿易輸出地帯になります。

戦略国際問題研究所(CSIS)のアンドリュー・クチンス氏の今年1月のレポートで、極東でのロシアの活動の報告がありましたが、日高氏の先月の最新の著作を読んで、プーチンの極東戦略がここまで進んでいるのを知り驚きました。

この著作の第3章第1部「ロシア極東太平洋艦隊が日本と対決する」が、PHP研究所から電子書籍として廉価で販売されています。

「プーチンは北海道を狙う」(BookLive!)
http://booklive.jp/product/index/title_id/273301/vol_no/001

ワシントンの軍事専門家は日高氏にこう言っているそうです。

「ウラジオストックを中心としてロシアの機動艦隊や潜水艦隊が行動することになれば、津軽海峡が極めて重要になってくる。しかも津軽海峡を常時ロシアの艦隊が航行することになると、北海道が日本列島から孤立して千島列島を含めたロシアの影響下に入ってしまうことになる」

「日本人が中国と尖閣諸島の危機に目を奪われている隙に、ロシアは海軍国家復活への道を歩んでいる」(日高氏)

つまり日本は、南方から尖閣諸島と沖縄を中国に、北方からは津軽海峡と北海道をロシアに「ハサミ撃ち」されている状況です。

南方から尖閣諸島と沖縄を中国が、北方からは津軽海峡と北海道をロシアが侵略する際、中ロ両国が「倒日同盟」を組んでくる可能性は充分にあります。

中ロ両国の対日本戦略に限らず世界戦略においても、ネット検索では中国とロシアが同盟を組んだという記事も事実も出てきません。それは至極当然で、両国が秘密同盟の方が都合がいいと考えれば、公表もしないし、検索結果にも出てきません。

しかし、米国の戦略国際問題研究所のアンドリュー・クチンス氏は、ロシアから中国への30年間にわたる天然ガス供給の契約(今年5月21日契約成立)の裏には、公表されなかった「国家機密」があると推測しています。

以下の記事は、7月10日の有料メルマガの一部「中ロ同盟は国家機密か」の記事です。

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    【1】 中ロ同盟は国家機密か

7月3日に私は自身のブログのトップページに次のように書きました。

「集団的自衛権では台頭する中ロ同盟には対処できない 中ロに対して米国が戦ってくれるわけがない その「抑止力」は破綻する」

ここで言う「中ロ同盟」とは、6月12日の有料メルマガで取り上げた「中国とロシアの軍事同盟的な協力体制」のことを指しています。
5月21日のロシアから中国への天然ガス供給の契約成立のニュースは、国際情勢の専門家に注目され多くの分析がされているようです。

中国国際ラジオ放送のウェブサイトによると、プーチン大統領が7月1日に中露関係について発言したそうです。中国外務省の洪磊報道官はこのプーチンの発言を高く評価し、次のように述べたそうです。

「洪報道官は、『両国の全面的戦略パートナー関係は、平等、信頼、相互支持、互恵共栄、世世代代の友好を基礎に建てられたものだ。同盟を結ばず、対抗せず、第三者に対する行動をとらないことは、大国間の平和共存、善隣友好、相互協力の模範といえる』と話しました。」

中国、ロシア大統領の中露関係の発言を高く評価 (7/02-2014 中国国際ラジオ)
http://japanese.cri.cn/881/2014/07/02/141s223161.htm

そこでは中ロ関係では「全面的戦略パートナー関係」では「同盟を結ばず」と述べています。
しかし、これを額面通りに受け取っていいものでしょうか。

米国のシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のアンドリュー・クチンス氏(ロシアとユーラシアが専門)の1月の報告は、このことを考えさせます。

例えば現在、米国は国防予算の大幅削減にともない、通常兵力を大幅に削減していますが、核兵器戦力の即応体制は強化しています。仮に中ロ同盟が結ばれたとして、それを世界に向けて公言すれば、米国の中ロに対する核兵器戦力の即応体制は何倍も強化されるでしょう。

また中ロ同盟を世界へ向けて公表すれば、欧米の資本と両国の経済の関係が悪くなります。
中ロ両国にとって、もし同盟を結ぶのなら秘密同盟の方が都合がいいのです。

アンドリュー・クチンス氏は今年1月の時点で、「中国とロシアで天然ガス供給の協定が結ばれた場合、その協定の完全な内容は、本質的には(本質的な点については)国家機密になる」と分析しています(“will essentially be a state secret”:will 強い予測・確信)」


Possibly, China and Russia will finally resolve their difference over gas prices and supply arrangements, but the full nature of that agreement, if it is achieved, will essentially be a state secret.
(結論部, PDF 9ページ)

Russia and the CIS in 2013: Russia's Pivot to Asia(「ロシアのアジアへの旋回」)
(2014-1月 戦略国際問題研究所)
http://csis.org/publication/russia-and-cis-2013?utm_source=feedburner&utm_medium=feed&utm_campaign=Feed%3A+CSIS-Russia-And-Eurasia-Related-Publication+%28Russia+and+Eurasia+-+Related+Publication%29



中国とロシアで結ばれた天然ガス供給の契約は、「ロシア側から2018年から30年間にわたり毎年380億立方メートルの天然ガスを供給。総契約額は4000億ドルを上回った」(ロイター)と見られています。

ロシアから中国への30年間にわたる天然ガス供給という、これほどの大きな契約です。
それゆえ、この契約のほかに「国家機密」として公開されなかった裏での取引きと協力事項があることを、ロシア問題の専門家クチンス氏は推測しているわけです。この天然ガス供給の裏で結ばれたかもしれない両国間での「国家機密」が、中ロの同盟的な協力体制である可能性を考えてみる必要があると考えます。

中国とロシアの軍事同盟的な協力体制 ( 6/12-2014 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38843166.html

例えが悪いかもしれませんが、徳川家(米国)による幕藩体制を倒すために、<犬猿の仲>であった薩摩と長州が<秘密同盟>を結び、そして幕藩体制が倒されたという史実があります。この薩長の<秘密同盟>では薩摩が武器を長州へ渡し、長州は米を薩摩に渡しその絆を深めました。中国の欲しい兵器と天然ガスをロシアが、ロシアの欲しいマネーを中国がという具合にです。

私の目に触れたものとしては、ロシアと中国の天然ガス供給の発表があった後も、中国とロシアの同盟の可能性を否定する意見が多いように思います。

しかし、ロイターのコラムニストであるアナトール・カレツキー氏などはこの発表の後、
「北大西洋条約機構(NATO)と米国のアジアにおける同盟関係に匹敵する中ロ関係構築の可能性」、
「核保有超大国間の戦略的再編の始まりを意味する可能性」、
「中ロ関係は最高の組み合わせだ」
と述べています。

そして中ロの連携・協力の関係の考えを否定することが、「楽観的かつ短絡的だという理由」を5つ挙げています。さらにロシアが持つ「軍事面の先進技術や航空技術、ソフトウエアなどの分野」を中国が必要としていることも指摘しています。

コラム:ガス契約で急接近の中ロ、憂慮すべき5つの理由=カレツキー氏 (5/24-2014 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0E402B20140524?sp=true


■ 関連記事
プーチンのアジアへの旋回シフト( 6/12-2014 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38830237.html


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マレーシア機撃墜 米国のロシアへの軍事介入はあるのか

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  乗客乗員298人を乗せて墜落したマレーシア航空MH17便(AFP)


7月17日にウクライナ東部で、親ロ派武装勢力によるものと思われるマレーシア航空機撃墜事件が起きました。

現在の時点では、オバマ大統領は米国が軍事介入を実施する可能性は排除しています(7月18日 ロイター)。

米国の戦略雑誌『ナショナル・インタレスト』に、この民間機撃墜についての記事があるというので読んでみました。ただし、この記事の執筆者はこの雑誌の編集者で、国際政治と軍事の専門家ではないようです。

The Ukraine Plane Disaster: Countdown to A New World War I? (7/17-2014  National Interest)
http://nationalinterest.org/blog/the-ukraine-plane-shooting-countdown-new-world-war-i-10903

保守系の雑誌らしく、「新世界大戦気悗離ウントダウンか?」と題名が付けられています。
私がこの記事を読んで1つだけ注目したのは、航空機を撃墜した地対空ミサイルの発射が誤射ではなく、親ロ派武装勢力がプーチンに彼らをもっと強力に支援させ、西側の欧米との対立をさらに悪化させるためのものであった可能性があるという指摘です。

One possibility may be that the rebels shot down the airplane in order to exacerbate the confrontation with the West--to force Putin to back them more strongly.

米国のシンクタンクであるブルッキングズ研究所は、マレーシア航空機撃墜のあったこの日、ロシア政府は親ロ派武装勢力への武器と援助物資の供給を止めなければいけないと言っています。

A New Tragedy in Ukraine: The Shootdown of Malaysian Airlines Flight 17 (7/17-2014 ブルッキングズ研究所)

しかしこの戦いは、オバマ政権の対ロシア戦略に敵対するプーチンの戦いなので、ロシアが武器と援助物資の供給を止めるわけもありません。オバマ政権の対ロシア戦略とはウクライナやグルジアをNATOに組み込むという戦略です。

旧KGB出身のプーチンはソビエト連邦の旧共和国をまとめあげ、「ソビエト帝国の復興」という悲願に執念をいまだ燃やし続けているのです。このことは米国のロシア専門家たちも承知しています。

そこで『ナショナル・インタレスト』の“Countdown to A New World War I?”(新世界大戦気悗離ウントダウンか?)の題名ですが、米国の「穏やかな」世界戦略を見る限り、この編集者の“World War”という言葉は、雑誌編集者の受け狙いとも取れるほど、アメリカ軍と米国の世界戦略からかけ離れているようです。

米国が抱える国際的に大きな火種は現在3つの地域にあり、それは(1)中国による東・南シナ海、(2)イラク南部の多くの石油施設を抱える中東、そして(3)ロシアが関与するウクライナです。(※ 米国でシェールガス・石油が多く産出されても、グローバルなエネルギー市場での価格高騰は米国の産業力に大きく影響を及ぼすので、中東地域への関与は依然として米国の重要課題です)

米国の太平洋軍の対外政策顧問であったマーク・ウォール氏(2012-13年在任)は、ロシアに脅かされるウクライナ情勢やヨーロッパに対しても、中国に脅かされる東アジアで行っている米国のリバランス政策が活用できると言っています。そして対中国政策でも使っている5つの指針を挙げています。


戦略国際問題研究所(CSIS)のウェブサイトに掲載されたマーク・ウォール氏の述べる5つの指針のなかから、『ナショナル・インタレスト』の雑誌編集者の“World War”の言葉が突飛に見えてしまう理由を挙げてみます。

First, don’t overplay the military component.
Limited military deployments are warranted.

軍備を重視し過ぎず、<制限された(限定された)>軍事配備が正当化される(必要となる)

It is important to provide such assurances, but also not to encourage them to act in ways that would incite conflict and drag the United States into fights not of its choosing.

「ウクライナやヨーロッパに確実さ(安心)を与えるのはよいが、対立を煽り立てて米国が戦闘に引きずり込まれるような方法で彼らを勇気づけない(助長しない)>ことが重要である

太平洋軍の対外政策顧問であったウォール氏のこの指摘は、中国による南シナ海でのベトナム船衝突事故や日本の尖閣問題などでも同じです。まるでオバマ政権の米国は、世界中のどこにおいてでも、戦闘や戦争に巻き込まれないことを最優先にしているように見えます

そしてウォール氏は、米国の軍事力行使の可能性について次のように述べます。

「米国はいま、海外で新たな軍事力行使に進めるベストな状況ではない。ワシントンの注意はいま、イラクに引き付けられている。そして米国政府は(国防)予算の制約という行き詰まり状態に直面している・・・・」

The United States is not in the best position to pursue new exertions abroad. Iraq now grips Washington’s attention. At home, it faces gridlock, budget constraints, and a public mood still smarting from interventions in Iraq and Afghanistan.

強制予算削減法による国防費の大幅削減の下で、ウクライナ及びロシアとの境界線に位置する国々、イラク、シリア、イランの中東、東・南シナ海を脅かす中国の3領域での火種を抱える米国は、ウクライナ一国のために世界全体の戦略と国家財政を狂わすわけにはいきません。

それゆえ、シリア攻撃を決断しなかったオバマ大統領は、ウクライナにしても尖閣諸島にしても、よくても「制限された(限定された)軍事力」しか投入して来ないことが予想されます。こういった情勢が第1次世界大戦前夜とは決定的に違うのです。

加えてウォール氏は、イラクとアフガニスタンへの軍事介入から、まだ苦痛を受けている国民の厭戦気分に米国政府が直面していることも挙げています。

マレーシア航空機撃墜やウクライナ情勢を近視眼的にとらえると、「世界大戦へのカウントダウンか?」などというように、よく目にするネット上の書き込みのような見方が出てきますが、米国の同盟国と友好国は世界中に多数存在します。曲がりなりにも米国はそれらの多数の同盟国や友好国の、敵からの防衛に大きく関わっています。

ロシア、中国、イラン、北朝鮮、イスラム武装勢力・・・・
<現実の世界では、>
ライトからの攻撃だけに気を取られていて、正面とレフトからの攻撃のことは忘れてました
では済まないのです。

国際政治アナリストのイアン・ブレマー氏は、金融・エネルギー面での経済制裁の強化は、「紛争の方向性を変えるわけではなく、問題をエスカレートさせることになる」と述べています。

コラム:撃墜事件がウクライナに与えた「3つの変化」=ブレマー氏 (7/18-2014 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/jp_column/idJPKBN0FP00H20140720?sp=true

イランと北朝鮮は欧米の経済制裁にもかかわらず、核兵器開発の道を進んでいます。プーチンの「ソビエト帝国の復興」という執念は、イランや北朝鮮の核兵器開発への執念と同じです。
ブレマー氏も主張していますが、ウクライナをとり巻く情勢はさらに悪化すると予想します。


■ 参考文献
 『アメリカはいつまで日本を守るか』 第7章(日高義樹著 2013年11月刊)

(了)

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原油価格と中東・アフリカ情勢−第3次イラク戦争をめぐってー

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上:ペルシャ湾最北の石油積出し港バスラ(イラク) 
下:NBCニュース “Iraq Turmoil”から


      原油価格と中東・アフリカ情勢

       ー第3次イラク戦争をめぐってー   


7月12日の今日の時点でのイラク情勢と原油価格情勢の報道で重要な3つの報道があります。

[1]
「イラクで攻勢を強める過激派組織は、首都バグダッド進攻に備え、指令ひとつで一斉に攻撃を開始する「潜伏要員」を首都中心部に送り込んでいるほか、周辺部からなだれ込む「支援部隊」を準備している。」

焦点:イラク首都で進攻に備える過激派要員、政府は摘発に躍起 (7/06-2014 ロイター)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140706-00000021-reut-m_est

[2]
「IEA(国際エネルギー機関)は「北部と西部を襲った暴力行為の影響をイラク南部の油田はこれまでのところ受けていない」とした上で、「同地域に不可欠なインフラを武装勢力が標的とし、大規模あるいは長期的な混乱を引き起こすリスクは残っている」と付け加えた。」

混乱続くイラク、南部の原油輸出は7月に回復の見通し−IEA (7/11-2014 ブルームバーグ)
http://newsbiz.yahoo.co.jp/detail?a=20140711-00000047-bloom_st-nb

[3]
イラク軍、士気低下し指揮も混乱 (7/11-2014 フィナンシャル・タイムズ)
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM1101O_R10C14A7000000/


以下に、6月26日に有料メルマガで配信した「原油価格情勢と米国の中東石油へのスタンス」の一部を掲載しました。


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    原油価格情勢と米国の中東石油へのスタンス

     ―第3次イラク戦争をめぐって―


【目次】
【1】 原油価格と中東・アフリカ情勢
【2】 米国のエネルギー安全保障とグローバル石油市場


    【1】 原油価格と中東・アフリカ情勢

ブルームバーグによると、「ゴールドマンサックスは6月23日付の資産配分リポートで、エネルギー価格は今後1年間に5%下落する」と予想したそうです。ある経済評論家がこの記事について、「イラク南部の石油施設はほとんど被害を受けていないのでイラクの混乱で上昇した石油相場や金相場はそう時間をかけずに落ち着いてくると思われる」と述べていました。

これは下記の記事についてのコメントだと思います。

ゴールドマン:商品相場、向こう1年間で5.5%下落と予想 (※ 抜粋記事 2014-6-24 ブルームバーグ)
http://www.bloomberg.co.jp/news/123-N7P2TR6JTSEC01.html

Goldman Sees Commodities Dropping 5.5% After Iraq-Driven Rally(上記記事原文)
http://www.bloomberg.com/news/2014-06-24/goldman-sees-commodities-dropping-5-5-after-iraq-driven-rally.html

この記事だけで「ゴールドマンの指摘通り石油相場は基本的に下落基調でしょう」などと言ってしまうのは余りにも早計です。
このブルームバーグの記事はイラク南部に武装勢力が進攻することは除外して書かれているのです。しかし、「規律と士気を欠き、独り立ちしていない力不足のイラク軍」(共同通信)に米軍が加勢したとしても、武装勢力による南部の油田・石油精製施設への進攻には警戒しておかなければいけないでしょう。

この記事には、ゴールドマンのコモディティーのチーフ・アナリストで著名なジェフリー・カリー氏のコメントがありますが、ジェフリー・カリー氏を含めた3人のゴールドマンのアナリストが、6月13日にはメール・レポートで次のように述べているそうです。「“ ”」で囲まれた部分がゴールドマンからの引用になります。


If the conflict reached the southern oil fields and the port of Basra, it would “likely have a significant impact on crude prices given current supply disruption in other OPEC members, in particular Libya,” the Goldman analysts said.

現在のほかのOPEC諸国で起きている供給途絶(混乱)、とくにリビア情勢を考えると、戦闘が、イラク南部の油田やペルシャ湾最北のバスラ港にまで及んだ場合、恐らく原油価格に大きな影響を与えるだろう。

Oil Topping $116 Possible as Iraq Conflict Widens (2014-6/17 Bloomberg)
http://www.bloomberg.com/news/2014-06-15/oil-topping-116-seen-possible-as-iraq-conflict-widens.html


ニューヨークを拠点としエネルギー市場を重点とするヘッジファンド(「アゲイン・キャピタル」)のジョン・キルダフ氏は、「イラクの供給の途絶は世界のエネルギー危機を意味する、これは誇張ではない」と電話で述べたそうです(6月13日に)。

―イラクの石油供給懸念は大きくなるが、それと同時に、リビアで続く戦闘は北アフリカでの原油産出を抑制し、核開発を行うイランへの国際的な制裁は輸出を削減し、ナイジェリアでの妨害活動は原油の流れを減少させる。―

このようなOPEC加盟国の状況からキルダフ氏は、イラクの供給不安について次のように述べています。

「イラクの原油産出量は日量約300万バレルで、これはOPEC全体の約10%を占める。リビアの供給不全とナイジェリアの不安定供給で、OPECは限られた予備供給能力しかない状態のままになっている。サウジアラビアはイラクの損失を埋め合わせることはできない。

このような状況に対し、OPECはこれまでの日量3000万バレルの産出目標を維持するとしています。OPECは世界の原油の約40%を供給しています。

イラク情勢は現在のところ米国次第ですが、過去のイラク戦争を振り返っても、米軍を増強し投入してもイラク国内の治安が正常化することは非常に難しいでしょう。そもそも前ブッシュ大統領への強い反抗意識から軍事専門家たちの反対を押し切って、オバマ大統領が2011年12月までに米軍を完全撤退させたことが誤りであったと言えるのです。

オバマによるイラクの完全撤退については、それによりテロリストや過激派が再びイラクへ多く侵入してきて、スンニ派とシーア派の対立と戦闘が再び激しくなることは当時から指摘されていました。

原油価格の高騰は、原発が停止していて円安政策をとる日本の、国債金利の高騰と経済・財政の悪化を招くことになります。これについては下記の記事で考察してあります。

▲撻襯轡穗僂任粒ぞ絅謄軅鐐茲如∪こγ罎龍睛と日本国債の金利が急騰する (2012-1/18 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/36285732.html

これとは反対に原油価格の高騰は、1日あたりの原油生産量で第1位のサウジアラビアとほぼ同水準のロシアのエネルギー世界戦略には強力な追い風となるでしょう(BP石油統計2013年)。ロシアが中国やアジア地域に対して天然ガス・石油のエネルギーによる支配を開始していることは、6月12日に有料メルマガで配信しました。

プーチンのアジアへの旋回シフト―中ロ同盟はアジアの覇権を目指す―(2014-6/12 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38830237.html

(◆ 7/12 リンクURL書き換え)


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中国とロシアの軍事同盟的な協力体制

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今日お伝えする記事は、有料メルマガで6月12日に配信した「プーチンのアジアへの旋回シフト」の第2節です。第1節は6月28日にブログで公開しました。第1節の続きにあたる内容になっていますので、併せてお読みください。

プーチンのアジアへの旋回シフト(第1節)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38830237.html


【序文】 中国の防空識別圏とロシアの空軍戦力(7月5日)

「ロシアの情報によると、中国は間もなくロシアと第4世代戦闘機Su-35の購入契約を締結する。中国は第1陣として24機を購入する。早ければ来年から引き渡される予定。」(6/30-2014 新華社通信ネットジャパン)

中国がロシアからSu-35戦闘機を24機購入へ−中ロ同盟の飛躍的強化が進んでいる−(7/01-2014 拙稿 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38835753.html

「Su-35はロシア軍事技術の粋を集めた戦闘機で、アメリカの戦闘機を上回っているとも言われている」(日高義樹氏 2013-11/30)

戦略国際問題研究所(CSIS)の2013年12月の報告では、2013年の3月の時点ですでに「中国はロシアから高度な軍事兵器を大量に購入しており、」その中にはSu-35も含まれているとあります。2013年3月というのは中ロ関係が同盟へ向かい始めた転換点にあたる月で、今日掲載する記事にはその解説がしてあります。

中国が東シナ海に防空識別圏の設定を宣言したのは2013年の11月ですから、中国の防空識別圏はSu-35などのロシアの空軍戦力が導入され、それが基礎になった構想と言えます。


In March 2013, Russian and Chinese media reported that Beijing was acquiring significant quantities of advanced military equipment from Russia. Among the multi-billion dollar systems to be bought by the Chinese military are six Lada-class attack submarines and 35 SU-35 fighter jets. These acquisitions are significant because they are sophisticated systems and it has been more than a decade since China purchased any significant weapon systems from Moscow.

From Russia without Love: Russia Resumes Weapons Sales to China (CSIS 2013-12/12)
http://csis.org/publication/pacnet-89-russia-without-love-russia-resumes-weapons-sales-china




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   プーチンのアジアへの旋回シフト
 
    ー中ロ同盟はアジア-太平洋の覇権を目指すー


2014年6月12日

【目次】
【1】 プーチンのアジアへの旋回シフト
【2】 中国とロシアの軍事同盟的な協力体制


  【2】 中国とロシアの軍事同盟的な協力体制 

冒頭で紹介した戦略国際問題研究所の Tales of Different “Pivots” という2013年1月のレポートでは、中国とロシアの間で「もっとも重大な問題として、軍事技術の協力と軍事協力の問題」が議論されているとすでに報告していました。

“The most serious issues of military-technical cooperation and military cooperation were discussed,” commented Deputy Defense Minister Anatoliy Antonov, who attended the meeting. 

今年5月20日の日経は、「中ロ首脳『戦略的関係、新段階に』 米国をけん制」と見出しを付けて報道しました。しかし、中国とロシアは2013年3月に習近平とプーチンのモスクワでの首脳会談で、両国間の強い協力関係を強調した共同声明を発表しています。その首脳会談でプーチンは「ロシアと中国の戦略的な同盟体制は、極めて重要である」と習近平に対して述べました。

この時の共同声明には初めて中国とロシアのあいだで「新しいタイプの大国関係」(“New Type Great Power Relations”)という言葉が使われました。この中ロ間で用いられた「新しいタイプの大国関係」については米国のシンクタンクであるジェームズタウン財団のウェブサイトに、これを考察した論文があります。中ロ間がエネルギー分野で連携し急接近を表明した今年5月の記事です。

Conceptualizing “New Type Great Power Relations”: The Sino-Russian Model (2014-5/07 ジェームズタウン財団)
http://www.jamestown.org/programs/chinabrief/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=42332&cHash=13148cfd7311153f1728b8fc16411b7b#.U5kubfl_uJl

この記事によると冷戦終結後、1995年に江沢民のスピーチのなかで使われた「新しいタイプの関係」(“New Type of Relations” (NTR))という言葉は、それよりも前から中国の専門家たちが使っていました。それから18年後の2013年3月の習近平・プーチン会談での共同声明で “Great Power” という二文字が採択され加えられ、「新しいタイプの大国関係」(“New Type Great Power Relations”)となったそうです。そしてそれは、オバマ大統領が米中両国について「新しいタイプの大国関係」という言葉を習近平との会談で使った3か月前のことです。

NTR remained in official Sino-Russian statements until “Great Power” was added and adopted by both China and Russia in March 2013 -- three months before use by President Obama at Sunnylands (Xinhua, March 22, 2013; White House, June 8, 2013).(※訳注 Xinhua 新華社)

米国と中国の間で「新しいタイプの大国関係」という言葉が公式に使われたのは、2012年2月の習近平(副主席)の訪米での講演が初めてですが、日本のマスコミではこの米中間の「新型の大国関係」ということばかりしか取り上げていないようです。しかし、その米中会談のほぼ1年後に、中国とロシアは従来のお互いの関係を「新しいタイプの大国関係」として、大きく前進させようと公言しているのです。

この記事のなかでは、この中ロの「新しいタイプの大国関係」という概念が、1990年半ば以来の中ロ関係の歴史を経て改良され、よく発達を遂げた、首尾一貫した中国の外交政策の帰結であるとしています。

またこの「新しいタイプの大国関係」という概念は、中ロの関係を安定させ、<アメリカの行動様式と異なる「新しい国際秩序」を確立するための手段>であるとも述べています。

First, NTGPR is a well-developed, coherent outgrowth of Chinese foreign policy with a history of use and refinement in Sino-Russian relations since the mid-1990s.
Sino-Russian joint statements articulate the concept as a means to stabilize their relationship and establish a “new international order” to shape U.S. international behavior.

2013年3月の中ロの共同声明の話は、米国のハドソン研究所の首席研究員である日高義樹氏の著作『アメリカはいつまで日本を守るか』(2013年11月刊)の中にもあります。しかし、米国のマスコミは、この習近平とプーチンの共同声明を殆んど伝えなかったそうです。

それは米国の専門家の多くが、中国とロシアが軍事的協調や同盟体制をとるのは極めて難しい、または不可能だと考えていたのが、その共同声明が注目されなかった理由だと日高氏は説明しています。

これに対して日高氏は、欧米に対抗するために、過去からこれまで敵対関係が基本線であった中国とロシアの関係は変化しているとその著作で言っていました。そして中ロは、軍事的関わり合いを飛躍的に強化し、両国は同盟体制に走り始めていると分析していました。(Su35の中国への売り渡し、空母建造での中国への技術協力など)

もちろん日高氏は、両国が同盟体制をとることは不可能だとする考え方も取り上げ、米国や欧州と経済的に密接に結びついている中国とロシアが、欧米と対決するのは経済的に見て非常に難しいといった見方も紹介しています。

ただ、歴史的事実はその反対事象も示していると述べ、密接な経済的関係があったにも関わらず、当事国間で戦争が始まった事例を挙げています。そして経済的・文化的に密接な関係があったとしても、それを超える要因があれば、戦争や軍事対決は容易に始まるとも述べています。

「戦争」という言葉が出てきましたが、私は、核兵器を含む大量破壊兵器が地球上に氾濫し、グローバリゼーションで世界経済が密接にかみ合う21世紀において、IQの高い大国の首脳や政権・官僚がそうそう簡単に、アニメゲームのように大きな戦争を起こすことはないと常に考えています。

大国同士の戦争とは、今まで築き上げてきた国家基盤に計り知れない巨大な損失を被る行為です。これは多くの人々の認識でもあると思います。日高氏のいう歴史的事例とは別に、中国とロシアの軍事的・経済的協力関係は世界秩序と国際情勢において、もう少し戦争とは別の形で具現化されていくと考えています。

前述の日高氏の2013年11月の著作レポートでは、第6章の「中国とロシアは軍事同盟を結ぶのか」で、中国とロシアの軍事力の状況についても書かれています。以下に私が注目した箇所を一部要約してみました。


(要約開始)
アメリカ海軍は第4世代の潜水艦作戦である海底ネットワークの開発を進めている。これは太平洋や東シナ海での中国のA2AD戦略を無効化し消滅させるものだ(A2AD:Anti-Access Area-Denial 接近阻止・領域拒否)。それに対抗して、ロシアは急速に古い潜水艦を新しいものに変えており、太平洋における潜水艦の戦いは新しい時代に入ろうとしている。「やや時代遅れの中国の潜水艦を尻目に」、アメリカとロシアの最新鋭の潜水艦が太平洋で活発な行動を展開している。

ベーリング海は北極海の一部で、温暖化現象で北極海の氷が解け始めるようになってから注目されている。米国海軍の首脳は、「ベーリング海はこれからアジアからヨーロッパなどへの、マラッカ海峡に匹敵する重要な海上ルートの拠点になる」と言っている。

ロシアと中国の海軍は明らかに責任の分担を図っている。ロシアが北極海からベーリング海、そしてオホーツク海から日本海へと海軍力を強化する一方で、中国海軍は東シナ海と南シナ海、さらに西太平洋の広大な地域で、強力な海軍力を展開しようとしている。<ロシアと中国の軍事同盟の目標は>当面、ロシアと中国が協力して海軍力を行使し、アメリカ軍を追い出すことである。
(要約終了)


先ほど戦略国際問題研究所の Tales of Different “Pivots” という2013年1月のレポートで、中国とロシアの間で、「もっとも重大な問題として、軍事技術の協力と軍事協力の問題」がすでに議論されていることを述べました。

安倍総理「ロシアとは融和、中国へは批判」G7で強調 (2014-6/05 テレビ朝日)
http://news.tv-asahi.co.jp/news_politics/articles/000028275.html

6月4日にベルギーで開かれたG7首脳会議では、ウクライナ問題で制裁強化を求めるアメリカなどとは対照的に、安倍首相はロシアへの融和を訴えました。集団的自衛権の議論を聞いていてもそうですが、安倍政権と自民党は国防情勢や国際情勢に弱いと思います。中ロの軍事的・経済的な協力ということを、まるで想定していない。「アワ(泡)ノミクス」と同じです。

5月24日に中国機が自衛隊機へ異常接近し、6月11日には中国のSu-27戦闘機が自衛隊機に2回異常接近するという事態が起こっていますが、非常に強気な中国のこのような行動は、中国とロシアのこれまで述べてきたような同盟体制という背景から考えるべきでしょう。


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中国がロシアからSu-35戦闘機を24機購入へ−中ロ同盟の飛躍的強化が進んでいる−

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「ロシアの情報によると、中国は間もなくロシアと第4世代戦闘機Su−35の購入契約を締結する。中国は第1陣として24機を購入する。早ければ来年から引き渡される予定。

中国のこの新世代戦闘機に対する関心は、領土紛争における中国の策略を示すものだと見る向きもある。中国がSu−35の購入に成功すれば、南シナ海と東シナ海の紛争においてすぐに効果があらわれるとみられている。

中国が150億香港ドルを投じてロシア製Su−35戦闘機を24機購入へ―香港メディア (6/30-2014 新華社通信ネットジャパン)
http://www.xinhua.jp/socioeconomy/photonews/387461/



(※ 上記記事は要約してあります)

「Su−35は米軍の最強戦闘機F22に張り合うために開発された機種」(日経)で、2013年のロシアと中国との売り渡しの同意については、米国のレーダーやミサイル防衛の担当者たちが懸念していました(日高義樹レポート)。

6月12日の有料メルマガでは、2013年から「中ロは、軍事的関わり合いを飛躍的に強化し、両国は同盟体制に走り始めている」という見方がされていた事をお伝えしたばかりです。


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張 良

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