国際情勢と経済戦略

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2011年08月

欧米ヘッジファンドの日本短期国債市場への流入始まる ― 格付け会社とヘッジファンドの連携 ―

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                  国際決済銀行(BIS)規制上の国債のリスク掛け目
                  Source: Bank for International Settlement


    欧米のヘッジファンドの短期国債市場への流入始まる
      ―大震災の復興需要の増大に乗ずる格付け会社とヘッジファンド―


「日本の短期国債利回りの低下が止まらない。欧米市場の不安定化により円転操作が有利になり、海外マネーが流入しやすい状況が続いている。海外マネーが金利低下を主導する構図はしばらく崩れそうにない。市場では、当面はヘッジファンドやアジアの中銀マネーによる短期債市場への流入が続くとの見方が出ている。」(下記記事を抜粋) 

止まらない短期債利回り低下、海外マネーは円転操作で流入継続か (8月25日 ロイター)
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22858120110825

中期国債と長期国債についても見てみたい。

「日本国債が格下げされたが、長期国債の利回りは低位で安定している。国債の暴落など起こらない」

このような今の数字をしか見ることをしない意見がメディアで多く言われているが、暴落説が叫ばれながらも日本国債の相場が堅調であったのは、リーマン・ショック後の景気の大幅な冷え込みで、国内の資金需要が極端に冷え込んでいたためだ。2010年度の銀行の国債の買い付け額は過去最高であった。2010年の統計によれば、大手銀行では1年間で13兆2000億円の資金余剰であったという(注1)。

そこへ3月の東日本大震災が起き、4週間後の4月7日の時点では大手7行が受けた融資要請の総額は8兆4000億円に達している。東北地方の本格的復興はこれからで、待ったなしの復興需要が民間銀行を待ち受けている。この先は民間銀行が国債を買っている余裕は全くない。マスコミ向けの数字とは別に、復興資金の総額の見通しは原発事故の被害も含めると100兆円とも言われている。加えて既に限界に達している公的年金や郵政グループが売ってくる国債を吸収する行き先も、民間銀行へと回ってくる(注2)。

今年1月に米スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)がAA−、8月に米ムーディーズがAa3と日本国債の格下げを行ったが、この2つの下のランクはともにA格となる。

「国際決済銀行(BIS)の自己資本比率規制によれば、AA格までの国債のリスク掛け目は0%だが、A格は20%のリスク掛け目となる。自国通貨建ての国債には、その国の当局が別の扱いをすることも認められる。そこで日本国債の95%を保有する国内投資家については、リスク掛け目ゼロのままだろう。」 (8月1日 日経 / 冒頭の数表参照)
(BIS規制第54項:「自国通貨のソブリン債保有に関しては、リスクウェイトが低減される可能性がある。」)

公的年金や郵政グループから民間の金融機関へと国債購入の主な引き受け手が替わり、財務省の意向に添った国債購入や運用は今後は保証されない。次回の格下げでA格となり、国内投資家についてリスク掛け目をゼロとしても、銀行は近づくBBB格のリスク掛け目50%を意識して堅調な購入が崩れる可能性がある。

格付け会社とヘッジファンドの連携という視点から見た場合、日本国内での余剰資金が潤沢にあった東日本大震災以前よりも、2012年へ向けてこれからの大震災による復興需要が膨れ上がってくる時機に、A格群での三段階からBBB格、BB格へと順々に段階的に格下げしていく方が利益収奪の理に適っている。

「一度にギリシャを破綻させたらうまみがない」 格付け会社が少しずつ段階的に格付けを下げていくという市場操作・手法でヘッジファンドを大儲けへと誘導した良い例が、ギリシャを含むユーロ債務危機だ(注3)。

S&Pは今年1月、日本の国債の格付けをAAからAAマイナスに引き下げたが、4月27日には日本国債の格付け見通しを「弱含み(ネガティブ)」に引き下げている。おそらく遅くても年内中に1段階もしくは2段階下のA格への再度格下げを行ってくるのではないか。

「ギリシャは標的にされた!」

ギリシャのパパンドレウ首相は2010年3月、こう吐き捨てたそうだ。
次の標的は日本だ。ヘッジファンドの多くは欧米の大手金融機関の傘下でありその別働隊であるが、為替市場と絡めた債券市場での攻撃は間近に迫っていると見た方が良いだろう。

そもそもリーマン・ショックの元凶のような格付け3社は、ヘッジファンドとともにアメリカを中心にして形成されている「金融複合体」の一部である「敵」として認識しておくことが、国家の危機管理を考える上で非常に重要なことだろう。
また格付け会社の格付けをもとにしたBIS規制により、国債への資金シフトを世界規模で作り出している国際決済銀行も、「金融複合体」の共犯でなくて何なのか。

ヘッジファンドは、コンピューターによる超高速取引(HFT)で円買いを行い日本経済を潰しながら、短期国債市場のシェアを伸ばしている。現在おこなわれているヘッジファンドの円買いと日本の短期国債買いは、ワンセットになった今後の大規模な円売りシナリオの一部だろう。

「破壊する前には繁栄がある。まずは上げてから落とす、これが、相場の常套手段。下げたかったら、上げろ、上げたかったら下げさせろ、まず逆に持っていくこと、人々の心理を変えること―これが世の中をいかに動かすか、相場をいかに持っていくかの当然のセオリーだ。」 (朝倉慶氏)


※注1、2、3: 『2012年、日本経済は大崩壊する』 (朝倉慶著 2011年7月刊)を部分要約。

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「止まらない短期債利回り低下、海外マネーは円転操作で流入継続か」

2011年 08月 25日 09:54 JST ロイター
http://jp.reuters.com/article/topNews/idJPJAPAN-22858120110825

[東京 25日 ロイター]日本の短期国債利回りの低下が止まらない。政府は24日に1000億ドル規模の基金創設を柱とする緊急円高対策を発表したが、外貨資金を円に転換して円貨で運用する円転操作が有利な状況は変わらず、かえって金利低下に拍車がかかった。

 日銀が2008年に導入した補完当座預金制度により、流通利回りが0.1%を下回って推移することに対する抵抗感は根強いが、海外マネーが金利低下を主導する構図はしばらく崩れそうにない。
 
 財務省が24日実施した3カ月物国庫短期証券(218回、11月28日償還)の入札結果は、募入最高利回りが0.0962%、平均利回りは0.0954%にそれぞれ低下した。17日入札の前回債(217回、11月21日償還)は最高利回りが0.1002%、平均は0.0982%だった。

 市場では「海外勢の需要を見越した業者が積極的な応札に踏み切ったため、事前に予想されたより堅調だった」(国内金融機関)との声が多い。

 大手金融グループの間では、国債利回りが0.1%を下回って推移することへの抵抗感が強い。補完当座預金制度で超過準備への付利金利が定められ、日銀当預に資金を寝かせておけば0.1%の運用利回りが期待できる。価格変動リスクを抱えながら同水準の国債に投資すれば、運用益どころか損失を被りかねないからだ。

 それでも金利反転の兆しがいっこうに見えない背景には海外勢の存在がある。

 財務省が毎週発表している「対外及び対内証券売買契約等の状況」によると、海外投資家の対内短期債投資は8月14日から20日の週の取得額が5兆4505億円と8月7日から13日の週に続いて5兆円の大台に乗せた。処分額を差し引いたネットベースでも2兆3100億円の「取得超過」と、前週の2兆9752億円に次いで過去最高規模を記録。「欧米市場の不安定化により円転操作が有利になり、海外マネーが流入しやすい状況が続いている」(市場筋)との指摘がある。

 政府は24日発表した円高対策で1000億ドルの基金を創設。「急激な円高の進行に対応するため、民間円資金の外貨への転換(円投)の促進により、為替相場を安定化させる」としたが、即効性が疑問視され、「短期マーケットで潮目を迎えるきっかけになるとは思えない」(東短リサーチの寺田寿明研究員)という。

 市場では「当面はヘッジファンドやアジアの中銀マネーが短期債市場に流入しそう」(セントラル短資の金武審祐総合企画部長)との見方が出ている。

(ロイターニュース 山口貴也、編集;伊賀大記)


DOMOTO
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∪ざ篩躡曚痢崕だ偽睨椣明」発言 と 世界の中央銀行の金への急速なシフト

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               写真は次期ECB総裁のマリオ・ドラギ (現イタリア中央銀行総裁)

<下記リンク、
『\ざ篩躡曚痢崕だ偽睨椣明」発言 と 世界の中央銀行の金への急速なシフト』からの続き>
 http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/35472860.html


     ■ 主要国は金準備増強へ

2011年5月現在の各国政府の金の保有量と外貨準備に占めるその比率を見ると、国別ではアメリカが圧倒的で8133トン−すべての国の30%、経済圏ではユーロ圏のトータルはすべての国の40%を占める。

United States    8,133.5   74.7%   29.7% (of All countries)      
Euro Area      10,792.4   62.5%   39.4% (of All countries)    
  (incl. ECB)

アメリカの次の順位を見てみると、ドイツ、IMF、イタリア、フランス、中国と続く。ユーロ圏全体での金準備比率は62.5%。中国・日本を含めた北東アジアと東南アジアの準備比率は欧米諸国に比べ極端に低い。修正金本位制へ移行した場合、朝倉慶氏が「発展著しいアジア諸国は貧乏に、欧米諸国は平穏に」と言うのがうなずける。

また大国である中国、ロシア、インドが行なった大規模の金の買い付けについては、国家の生き残りをかけた「基本的な重要戦略」として捉えるべきだ。朝倉慶氏は2009年の4月時点のレポートでこの点を強調している。ここでは、大規模の金の買い付けを行った中国とロシアが、SDR本位制の実現という戦略目標を持って動いているという事を考え合わせることが重要だと思う。

石油産出国ロシアのSDR通貨構想 ( 拙稿 2010年7月 )
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/32644855.html

 ※ 以下、国名の左横の数字は世界順位、国名の右は金保有量(t)、金準備比率を表す。

  6 China       1,054.1    1.6% 
  8 Russia        830.5    7.8%
 11 India          557.7    8.7%

( 9 Japan         765.2    3.3% )

私はユーロ危機ではユーロ圏が崩壊するのは時間の問題と考えていたが、PIGS諸国の数字を見ると次のようになっている。

  4 Italy        2,451.8   71.4%
 14 Portugal       382.5   84.8%
 19 Spain         281.6   40.7%
 30 Greece        111.5   79.5%

 74 Ireland          6.0   14.0%        

ポルトガル、ギリシャ、スペインの金準備比率はいずれも高いが、深刻な財政難であるにも関わらず中央銀行は金の売却を行っていない(前出 Gold News 参照「ユーロ圏の中央銀行が金購入へ方向転換」)。

ゴールドマン・サックスが送り込んだマリオ・ドラギのイタリアは、金保有量第3位である(国別)。イタリア中央銀行総裁のマリオ・ドラギは次期ECB総裁(11月から)であるが、2002年〜2006年までゴールドマン・サックスの欧州部門の副会長をやっており、ギリシャ粉飾決算のすべてを知っていたとされる。ドラギの動向は、今後のアメリカのシナリオを読むうえで重要ポイントとなるはずだ。

さて、朝倉氏は、メキシコの93トンの購入(2011年初め)をアメリカが主導する北米経済圏NAFTAの将来と関係づけているが、カナダを見ると現時点でも3トンほどの金しか保有していない。

 32 Mexico        106.0    4.0%
 78 Canada         3.4     0.3% 

しかし、ゴールドマン・サックスの予想では、2050年頃のメキシコのGDPの順位は世界第5位になるとされている。(ちなみに同社の予想によると、1位アメリカ、2位中国、3位インド、4位ブラジル、5位メキシコ、6位ロシア、7位インドネシア、8位日本)−Wikipediaー
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%A1%E3%82%AD%E3%82%B7%E3%82%B3

 50 Brazil          33.6    0.5%
 38 Indonesia        73.1    3.2% 

朝倉氏は、メキシコのGDPが日本の6分の1にしか過ぎないことを挙げ、一度に93トンという膨大な量の購入は「一中央銀行の独自の決定とは思えない」と述べ、これをアメリカによる修正金本位制移行への兆候だと言って問題視している。これについては別の見方もあるが、その見方はフェイントである可能性もある。

「メキシコ中央銀行は4月に5.9トンを購入し、ベラルーシは1.1トン購入している。メキシコ中央銀行の Agustin Carstens 氏は、国際通貨基金(IMF)次期総裁へ立候補している。そのメキシコ中央銀行が今年第一四半期に購入した金の量は、それまでの金備蓄量の12倍であった。」(6月14日 Gold News)

 56 Korea          39.4   0.6% (2011年7月)

韓国は、主要国の中では最も金保有量が小規模な国の一つだ。世界で7番目の外貨準備高を持つ韓国は、現在そのあまりにドルに傾いたポートフォリオを見直すべく、6〜7月には25トンの金を購入し、金準備の増強を始めた(8月2日 Gold News)。

ここまで第2節、第3節で見てきたように、ゼーリック世銀総裁の「修正金本位制」の発言があった2010年から、世界各国は金準備の増強を始めている。


     ■ 結び:米国の大学で拡大する「金本位制」論争

今年4月に出された日高義樹氏の著作レポート『いまアメリカで起きている本当のこと』では、米ゲインツビル州立大学のウイリアム・グリーン博士が主張している「アメリカは金本位制に戻るべきだ」という意見をめぐる論争が、いまアメリカの大学で爆発的に拡大しているという。
グリーン博士は進歩派の学者で、オバマ大統領の政治ネットワークを作り上げたことで知られている。グリーン博士の進歩派勢力に対する影響力は強く、それが金本位制の論争をアメリカの大学に爆発的に拡大させているといった格好のようだ。

グリーン博士の主張は、アメリカの憲法第1条第1項にある「アメリカ合衆国の各州は、負債の支払いに金か銀を使わねばならない」という条文に基づくもので、FRBの専門家は次のように指摘しているそうだ。

「この憲法論争の行方次第では、アメリカ人のドル離れが一挙に進み、金本位制に戻ろうという動きがアメリカ中に出てくる可能性がある」

第3節までは世界の各国の中央銀行の動きを追ってみたが、国民レベルでは、ドルを信用しなくなりだしたアメリカ人が盛んに金を買っている。
「一方、中国当局は急ピッチで、中国工商銀行などの4大銀行を使って国民・民間に金を保有させようと動いている」。国民・民間の保有量を増やし、国としての金の持ち高を大幅にふやそうというのはロシアやインドでも同様なようだ(朝倉前書)。

朝倉氏は、アメリカによる「修正」金本位制が、ドル、ユーロ、円から成る為替市場の破壊的な混乱状態を待った上で打ち出されてくると予測している。この「修正金本位制」をアメリカがどのような方法で世界に呑ませるかについてはさらに補足したいと思うが、それはまたの機会にしたいと思う。


■参考リンク(拙稿集)

アメリカの経済戦略
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/folder/1198627.html
中国・ロシアの経済戦略
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/folder/1204533.html


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http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735
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\ざ篩躡曚痢崕だ偽睨椣明」発言 と 世界の中央銀行の金への急速なシフト

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 目次

  ■ ゼーリック世銀総裁の「修正金本位制」発言
  ■ 世界主要国の中央銀行の金へのシフト
  ■ 主要国は金準備増強へ
  ■ 結び:米国の大学で拡大する「金本位制」論争


「中央銀行による金の購入が拡大している。国際調査機関などが19日発表した1〜3月の金の世界需要統計によると、中央銀行などの公的部門の売買動向は129トンの買い越だった。新興国を中心に外貨準備を分散化する目的で金を買う動きが続いている。買い越し幅は前年同期の2倍に膨らんだ。」(5月20日 日経)

金の購入、中央銀が拡大−1〜3月の世界需給統計 外貨準備分散化で−
http://blogs.yahoo.co.jp/material735/5075248.html

新興国に金準備増強の動きが拡大:
「中国、インド、ロシアのBRICs諸国に加え、今年に入り、メキシコ、ボリビア、韓国、タイなど中南米、アジア諸国の中央銀行が外貨準備の一部として金を購入している。1990年代は欧州の主要中央銀行が年間500トン以上の大量金売却に走った結果、金価格は1999年に250ドルの安値をつけるに至った。その公的部門が昨年から買い手に転じている。今年は既に200トン近くの購入量を記録している。ドル、ユーロに偏った外貨準備の分散運用を始めたのだ。金高騰をコモディティー(商品)の範疇でいくら考えても読めない。震源地は通貨の世界にある。金は無国籍通貨として位置づけられる。」(WGC日本代表 豊島逸夫 8月3日 日経)

米国各州では金や銀を鋳造することや通貨として流通させること、税金を金や銀で支払うことなど、ドルから金へとの流れが州単位で、法制化される動きが活発になっている。ユタ州、バージニア州、モンタナ州、ジョージア州、アイダホ州、コロラド州、インディアナ州、オクラホマ州、テネシー州など、米国各州に金本位制に向けた実験的な動きが水面下で始まっている。(『2012年、日本経済は大崩壊する』 朝倉慶 2011年7月刊)


    ■ ゼーリック世銀総裁の「修正金本位制」発言

はじめに、7月27日に紹介した朝倉慶氏の「逆ニクソンショック(金本位制への回帰)」の記事の補足をしたい。

「朝倉 慶: 逆ニクソンショック(金本位制への回帰)−日本の国家破綻を見越したアメリカの目論見(もくろみ)とは?−」
 http://www.asyura2.com/11/hasan72/msg/545.html

朝倉氏のこの記事は7月26日に船井サイトに掲載されたものであるが、7月10日に発売された同氏の新刊『2012年、日本経済は大崩壊する』の内容から見ると重要な箇所が省略されている。またタイトル中の「金本位制への回帰」は誤解を招きやすいと思う。同書第5章では、金本位制について、

発行量が限られている金は、現在の世界では金本位制に戻ることはできないが、部分的に金を使用して通貨体制を再構築することは充分ありうる

と述べている。
朝倉氏は、2010年11月8日に世界銀行総裁のゼーリックが英フィナンシャル・タイムズ紙への寄稿で新たな通貨協調制度を提唱し、『インフレ、デフレ、将来の通貨価値に関する市場の見方を示す参考指標として金を使用すべき』と呼びかけた」ことを注視。このゼーリック総裁の非公式なアナウンスを「明らかに金本位制への移行を目指す確信的なアナウンス」だとして警告している。

ゼーリック総裁の寄稿は、11月11日韓国で開催されたG20首脳会議を直前にして行われたが、国際通貨体制の中で金が果たす役割を大きくすべきだと指摘した。11月11日の日経によれば、この後ゼーリックは欧米メディアにインタビューを受け、総裁は『金本位制や固定相場制に戻すことを狙ったものではないと』としながらも、通貨価値や物価を測る「指標」として金を活用すべきだと説明した。日経はこの「指標」について、「ただし指標としての活用策の詳細は明らかにしなかった」と記し、今後の世銀関係者の発言が注目されるとして結んでいる。

時事通信によれば、FTはゼーリック総裁の考えを「修正版金本位制」とネーミングし、同総裁がその導入を検討すべきだとの考えを表明したと伝えている。この寄稿の中では同時に、ドル、ユーロ、円、英ポンド、人民元の5大通貨を基軸とする新たな通貨体制の確立を提言している。(2011年1月の米中首脳会談の共同声明において、米国は「中期的には人民元がSDRの構成通貨になることを支持する」と明記している。−日経−)

「修正版金本位制」の検討を 世銀総裁がG20首脳会合控え寄稿 (11月8日 時事)
5大通貨で新国際通貨体制を 世銀総裁が提言 (11月8日 日経)
 http://www.rui.jp/ruinet.html?i=200&c=400&m=240598

ゼーリックによる寄稿記事とその後のインタビューを伝えたFTの元記事は、購入のロックがかけられているので読んではいないが、英テレグラフ紙などによるとゼーリックは "consider employing gold as an international reference point." と表現したようだ。時事通信の訳では分かりにくいが、「(通貨などに)関連させた指標として金を採用することを検討すべき」とした方が分かりやすいかと思う。

つまり世銀総裁ゼーリックが提言した新たな国際通貨体制とは、現状では発展途上にあるSDR通貨に金を部分的にリンクさせた通貨体制として理解できると思う。SDR構想は中国や米コロンビア大学のスティグリッツ教授が主張している。

日本語での検索ではあるが、ゼーリック総裁の寄稿にはアメリカの学界やシンクタンクの研究者から現実的でないとして多くの批判が上がっている。しかし彼らが持ち出してくるのは1971年のニクソン・ショック以前の金本位制であり、現在のSDR通貨に金をリンクさせた通貨体制について論じたものは見当たらず、焦点は金本位制の方へのみ集中していた。また、「金を参考指標とした活用策の詳細」(日経)を予想したり、「部分的に金を使用して再構築した通貨体制」(朝倉氏)を予想した上での批判は見当たらなかった。


     ■ 世界主要国の中央銀行の金へのシフト

世界各国の中央銀行は約22年ぶりに2010年以降、金の売り手から買い手に変わっている。「中央銀行は猛然と金を購入し始めた」(朝倉氏)。

大規模な購入をあげると、インドが09年8月-10年3月で221トン、ロシアが09年8月-10年11月で229トン、メキシコが2011年初めに93トン。中国はリーマンショック前は日本の765トンよりも少ない600トンの保有量であったが、半年後に一挙に454トン増やしたという驚異的な報告を発表し、現在の保有量は1054トンで国別では世界第5位となっている。中国、ロシア、インドなどの中央銀行は、外貨準備を米ドル通貨から金へシフトさせているとも言われている。

(世界の各国政府と国際機関の現総計は3万700トン。データはIMFの統計を記載したサイトから使用。保有量の統計値は発表月の2ヶ月前のものという注釈に従っている。)

「ロシア、メキシコ、べラルーシは、金購入を2月より断続的に行っている。(中略)ロシアの中央銀行の副総裁 Georgy Luntovsky は、金備蓄量を継続増加させる方針であり、その量は年間100トン以上を計画していると、1月に述べている。今年に入り、ロシアの中央銀行は36.2トンの金を購入している。」(6月14日 Gold News)

このほかアジアではタイ、バングラデシュが目立つほかスリランカなども小規模の購入をしているが、冒頭の日経記事で紹介したメキシコ、ボリビア、韓国、タイなどの中南米、アジア諸国の中央銀行の金の購入は、2010年11月のゼーリック発言以降に行われていることが重要な点だ。G20の前に行われたゼーリック世銀総裁の「修正金本位制」のアナウンスによって、世界各国の中央銀行は金準備の増強を開始したと見るべきだろう。

またユーロ圏の中央銀行はこの数年、金の売却量を大幅に減らしている。1990年代から常に売り手であったユーロ圏の中央銀行が金を売却せず購入している。「これは方向転換といえる」。欧州中央銀行のウィークリーレポートから作成されたグラフ(本投稿冒頭のグラフ)を見ると、ユーロ圏全体としての金備蓄量の変化は2010年に入り増減ゼロを維持している(6月17日 Gold News 日本版)。

「ユーロ圏の中央銀行が金購入へ方向転換」
http://goldnews.bullionvault.jp/content/%E3%83%A6%E3%83%BC%E3%83%AD%E5%9C%8F%E3%81%AE%E4%B8%AD%E5%A4%AE%E9%8A%80%E8%A1%8C%E3%81%8C%E9%87%91%E8%B3%BC%E5%85%A5%E3%81%B8%E6%96%B9%E5%90%91%E8%BB%A2%E6%8F%9B

4月12日のロイターでは、世界の中央銀行の外貨準備部門の管理者39人(39ヵ国)にアンケート調査した結果、70%以上の管理者が金の買い越しを維持していく方向であると回答したことを伝えているが、その背景として従来の準備通貨の信頼性が低下していることを挙げている。

Central banks turn net gold buyers, cut euro zone debt: survey
http://www.reuters.com/article/2011/04/12/businesspro-us-centralbank-idUSTRE73B7WP20110412

日本は世界9位で765トンの金を保有しているが、朝倉氏は前書で「能天気なのは日本の機関投資家と日銀ぐらいだ」と述べている。

下記の2つのリンクは、2011年5月現在の世界各国の中央銀行ほか公的部門が保有する金の保有量と外貨準備に占める金の比率である。資料は金の国際調査機関、ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)のサイトのもの。これはIMF国際金融統計を使用している。7月版は5月現在の保有量を記載している。参考までにWGCの数字をコピーした2010年9月版のリンクも添えた。

Latest World Official Gold Reserves (2011年7月版:無料登録にてダウンロード可)
http://www.gold.org/government_affairs/gold_reserves/

「世界の中央銀行金保有ランキング」(2010年9月版:閲覧自由)
 http://www.inaco.co.jp/isaac/shiryo/world_data/world_gold_council.html#0


<※「∪ざ篩躡曚痢崕だ偽睨椣明」発言 と 世界の中央銀行の金への急速なシフト」へ続く>
 http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/35473133.html


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