国際情勢と経済戦略

戦略的立場を方針としています。世界一流の専門家たちの分析は・・英文情報で国際情勢・軍事と世界・日本経済の解説記事を紹介します。
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貿易戦争の激化が1929年の世界大恐慌を引き起こした

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Kremlin Pool/ZUMA Press/Newscom


米共和党系シンクタンクのヘリテージ財団のライリー・ウォルターズ氏の記事、 

The Worst Scenario For An Emerging Trade War With China(ヘリテージ財団 Aug 13th, 2018)
https://www.heritage.org/trade/commentary/the-worst-scenario-emerging-trade-war-china


ヘリテージ財団はトランプ政権に強い影響力を持っている。

ウォルターズ氏の結語、

For now, the combination of a slowing Chinese economy and a growing U.S. economy threatens to lead us into a real trade war.


上記の記事の最後にはWalters氏が書かれた今年4月の記事に、“lead us into a real trade war”としてリンクが張られている。

Trade Wars Have No Winners, Only Badly Damaged Survivors(Investors Business Daily 4/06/2018)
https://www.investors.com/politics/editorials/trade-wars-have-no-winners-only-badly-damaged-survivors/

この記事で重要なのは以下の部分。

But trade disputes and tariffs have a history of becoming nasty economic downturns. There is, of course, the Smoot-Hawley tariffs, which caused a massive contraction in global trade and output in the late 1920s and led to the Great Depression. More recently, in 1971, President Nixon devalued the dollar, imposed a 10% "surtax" on all imports, and the 1970s stagflation began.

The point is, trade wars are hardly ever beneficial. So maybe it's time for both countries to cool their rhetoric, step back, and return to talking. Before we add to the damage and end up with another global economic meltdown.


■ 注釈: Smoot-Hawley tariffs
スムート・ホーリー法
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B9%E3%83%A0%E3%83%BC%E3%83%88%E3%83%BB%E3%83%9B%E3%83%BC%E3%83%AA%E3%83%BC%E6%B3%95

スムート・ホーリー法(スムート・ホーリーほう、Smoot-Hawley Tariff Act)は、ホーリー・スムート法(Hawley-Smoot Tariff Act)の名でも知られ、アメリカが1930年6月17日に成立した関税に関する法律であり、20,000品目以上の輸入品に関するアメリカの関税を記録的な高さに引き上げた。多くの国は米国の商品に高い関税率をかけて報復し、アメリカの輸出入は半分以下に落ち込んだ。一部の経済学者と歴史家はこの関税法が大恐慌の深刻さを拡大した、あるいはそれ自体を引き起こしたと主張している[1][2][3]。


上記のウィキペディアの記事の注釈では、「一部の経済学者」としてミルトン・フリードマン(ノーベル経済学賞受賞)を挙げている。

ウォルターズ氏はフリードマンと同じ見解で、貿易戦争のエスカレートが1929年の世界大恐慌を引き起こしたと警告している。

トランプ政権に強い影響力を持つヘリテージ財団の論客ウォルターズ氏がそれを警告しているのだが、その警告はトランプ政権の中でどこまで考慮されるのだろうか。

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日本国債先物 ヘッジファンドは、いつ動き出すか?

ご無沙汰です。

元ジョージソロス氏アドバイザーの藤巻健史氏のHPから。
https://www.fujimaki-japan.com/takeshi/6227

藤巻健史氏は狼少年ではありません。

1.昨日の金融政策決定会合の決定に関して

日銀が昨日(7月31日)の金融政策決定会合で「長期金利の一定幅の動きを容認」した。これは「長期金利の上昇を容認した」ということ。これは容認というより、もう長期金利を抑えきれないとのgive up 宣言と私には思える。日銀がマイナス利廻りの国債を買わない限りマーケット参加者はマイナス利廻りの国債を買うモチベーションは無い(ただし短期金利がマイナスならば話は別)したがって爆買いしても△1%になる心配も△5%になる心配はない。いくら爆買いすればゼロ%で止まる。しかし+0.2%とか +0.5%への緻密な誘導は至難の業。+0.2%に誘導しようと思ったら+2%になってしまう可能性もある。どのくらい買うのを減らすとどのくらい金利が上がるかなどわかっていないのだから。

2.私がもしまだ市場にいたら国債売りを徹底的に仕掛ける

地域金融機関の経営悪化を遊猟していることが昨日の金融政策決定会合で明確になった。これで長期金利を更に下げるとの選択肢は無くなった。それならば、もし私がまだ市場にいたら国債先物を思いっきり売ったと思う。「成功すれば大儲け、失敗しても損は極小」の取引は1992年にジョージソロスが「英国中央銀国に買った男」と言われた時と同じ論理だ。日本人トレーダーがどう考えるのかは知らないが、私がこう考えるということは、海外のヘッジファンドのオーナーあたりで、同じようなアイディアを持つ人が出てくるのではないか?(一般論ではあるが)経験上、私と思考回路が似ている人が多いと思うので。

以下省略。
このあとも読んで見てください。


>>海外のヘッジファンドのオーナーあたりで、同じようなアイディアを持つ人が出てくるのではないか?

時間が許せば、この部分をできるだけサーチしたいと思います。


■■お薦め本
『財政破綻後 危機のシナリオ分析』 – 2018/4/19
https://www.amazon.co.jp/gp/product/453235773X/ref=oh_aui_detailpage_o03_s00?ie=UTF8&psc=1



「北方領土交渉」無残な結末

10-n-abeputin-a-20141019 The Japan Times


安倍政権の対ロシア交渉と政策・・・

プーチンにやられた[12・15]安倍「北方領土交渉」無残な結末 – 2016.12.5. 週刊現代http://wgen.kodansha.ne.jp/archives/37815/

[トランプとプーチンにナメられて……]安倍官邸大パニック[実況中継] – 2016.11.28. 週刊現代
http://wgen.kodansha.ne.jp/archives/37617/


安倍政権の対ロシア外交・・・馬鹿の底が知れない。

私はこの日ロ交渉を初めから冷めた目で見ていたが、ロシアとプーチンのやり方や本質をよく理解していれば、最初から期待の「き」の字もできなかったはずだ。

プーチンの巨視的な中長期的アジア・極東戦略、戦略の塊であるロシアの戦略家たちと、薄っぺらい安倍外交では相手にならない。プーチンの極東戦略(軍事的・経済的)に無知なこの交渉が失敗に終わるのは、自明なことだ。

ロシアを相手にこのような戦略思考が欠落した外交しかできないのは、米国に60年以上守られ続けてきた「平和ボケ」が、安倍首相とその政権内に深くしみついているからだろう。


アベノミクスも失敗した。いま、日本の経済を動かしているのはアベノミクスの亡霊だ。

私のブログの過去ログ倉庫には、ロシアを扱った記事が結構多いので、ロシアの戦略を考えるうえで参考になればと思います。

国際情勢と経済戦略(過去ログ倉庫 Yahoo!ブログ)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735

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中国の長期SDR戦略とBRICS

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中国のSDR通貨バスケットについての長期戦略は、マスコミ報道とはだいぶ違うようです。

IMF(国際通貨基金)理事会は2015年11月に、人民元をSDRを構成する通貨のひとつにすることに決定しました。新しい通貨バスケットSDRは2016年10月1日から実施されます。その構成比は米ドルを41.7%、ユーロを30.9%、人民元を10.9%、日本円を8.3%、英ポンドを8.1%と定めます。これによりIMFは人民元を、日本円を抜く世界第3の通貨と認めたことになります。

中国の通貨世界戦略について、私はこれまで記事を書くことが何度かありましたが、次の記事ではSDRへの人民元の追加をめぐる、一般の受け取り方とは違う中国の戦略が露わになります。

中国人民銀行の副総裁である易綱氏はIMFに対して、SDR通貨に主要な新興経済国(BRICS=ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカ)の通貨を含めることを、2015年のSDR見直しで検討するべきであると主張していました。同時に易綱副総裁はIMFに対して、BRICSなどの通貨を含めた「影のSDR」(“a shadow SDR”)の研究をより深めて行うよう要請していました。

The deputy governor of the PBC (and also the head of SAFE), Yi Gang, urged the IMF to conduct more research into a shadow SDR and argued that “the IMF should consider including currencies of the BRICS [Brazil, Russia, India, China and South Africa—the world’s largest fast-growing emerging economies] countries and other emerging economies when it next reviews its SDR system by 2015.” But Yi was also quoted as saying that “China is in no hurry as the SDR has so far been only a symbolic currency basket.”80

CHINA’S EFFORTS TO EXPAND THE INTERNATIONAL USE OF THE RENMINBI (米中経済安保調査委員会 February 4, 2016 PDFファイル)
http://origin.www.uscc.gov/Research/china%E2%80%99s-efforts-expand-international-use-renminbi

この報告書『人民元の国際的な使用を拡大しようとする中国の取り組み』を書いたのは、ブルッキングス研究所の著名な中国経済の専門家エズワー・プラサド氏です。
プラサド氏は以前に、IMFの調査部門の金融研究部の責任者であり、その前はIMFの中国部門のトップでした。

上記の箇所には注釈が付けられており(80番)、この箇所と関連が深いロイターの記事が記載されていたので下記にそのリンクを記します。

China FX head proposes adding BRICS currencies to SDR –report (ロイター May 5, 2011)
http://af.reuters.com/article/currenciesNews/idAFL3E7G500820110505?pageNumber=2&virtualBrandChannel=0&sp=true

プラサド氏は、この報告書の中で人民元をSDRに含める決定がされた経緯を説明する際に、人民銀行の周小川総裁が2009年3月の論文で、SDRに「主要な新興経済国」の通貨を組み込むことを提言したことを書いています。

In March 2009, PBC Governor Zhou Xiaochuan issued a paper, “Reform the International Monetary System,” on the PBC’s website.75 The paper laid out the case for SDRs to play a more prominent role in global finance and suggested that the composition of the SDR needed to keep up with changing times by incorporating the currencies of the major emerging market economies.

易綱副総裁がIMFに対して、BRICSなどの通貨を含めた「影のSDR」(“a shadow SDR”)の研究を始めるよう要求したと、上記のロイター記事が伝えたのは2011年5月ですから、これは周総裁の論文発表の2年後になります。

世界経済をみるとBRICSは全体的に景気沈滞がひどいですが、ブラサド氏はこのロイター記事での易綱副総裁の次の言葉(2011年5月)を引用しています。

「SDRは今までのところ、象徴的な通貨バスケットでしかないので、中国は(『影のSDR構想』について)急がないで辛抱強く(ゆっくり構えて)行動していく。」

Yi, whose comments appear to elaborate on Zhou's initial proposal, said that China is patient.
"China is in no hurry as the SDR has so far been only a symbolic currency basket," Yi was quoted as saying.


SDR(特別引出権)は、IMFの加盟国の準備資産を補完する手段として、IMFが創設した国際準備資産です。仮想の準備通貨とも言えます。

私は、2014年8月に中国のゴールドの大量保有とSDR計画を結びつけて、「BRICS主導下のSDR構想」として考察しましたが(下記リンク記事)、中国は米国主導のIMF体制に単純に取り込まれているわけでは決してないことが、プラサド氏の報告書やロイターの記事からわかります。そして、中国が米国主導の通貨体制に対抗する通貨体制を長期的に構想している事が窺い知れます。

【後編】 中国のSDR戦略はドル・システムを衰退させるか−ゴールドを含むポスト・ドル支配体制− ( 拙稿 2014/08/28)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/38999017.html


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後編 プーチンは地中海を支配しNATOを分裂させようと目論む

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プーチンはオバマに地中海での戦略地政学的な敗北を受け入れさせて、アサド政権存続の条件を呑ませようとする


前回の続きです:
プーチンは地中海を支配しNATOを分裂させようと目論む(前編)
前回:http://domoto-world.com/archives/1806837.html


このような海空域でのロシアの活動は、NATO同盟にとって「テロとの戦争」でも問題となるだろう。NATOは北アフリカ沿岸と中東の至る所のテロリストの標的を、地中海を拠点とした軍艦、潜水艦、戦闘機から攻撃する能力に長く頼ってきた。

我々は1991年以来(訳注-1991年 ソビエト連邦解体)、地中海での海空での戦闘について心配する必要がなくてやってきた。しかし、いま、そのそれを心配する必要が出てきた。

アメリカ軍はすでに(世界の安全保障に)過剰関与し予算縮小に直面しているので、地中海での軍備が必要であることはもっと多くの軍艦や軍用機を買うか、ほかの戦域を削ることを意味する。ほかの戦域とはペルシャ湾や西太平洋のことだ。アメリカ軍にはもう地中海での軍備に割くべきキャパシティーがない。

このようなプーチンの地中海での覇権獲得への戦略は、NATOに圧力をかけると同時におそらく<NATOを分裂させる>ことさえ狙っている。

プーチンはオバマ大統領と共和党の大統領候補者ドナルド・トランプにさえ、この戦略地政学的な敗北を受け入れるよう説得している。

He has persuaded President Obama and even a Republican presidential candidate, Donald Trump, to accept this geostrategic setback.

それは実に優れた戦略である。私たちはこの重大な危機的状況で、プーチンのこの手段について考え続けている。

(抄訳終了)
------------------------------------------------------------------

やはり、プーチンの中東戦略は、明らかにNATOの分断と弱体化を主目的の一つとして狙ったものであることが、ケーガン氏の分析からもわかります。

私が読んだものの中でもロシアの世界戦略を明確に述べたものとして、国家安全保障会議のニコライ・パトルシェフ書記(書記局トップ)の次のような言葉があります。

「欧州を米国の支配から切り離すために、大西洋をはさんだ米欧の協力関係を弱体化させる」

Preparing for War Against the US on All Fronts—A Net Assessment of Russia’s Defense and Foreign Policy Since the Start of 2014
(10/16-2014 ジェームズタウン財団)
http://www.jamestown.org/regions/russia/single/?tx_ttnews%5Btt_news%5D=42962&tx_ttnews%5BbackPid%5D=653&cHash=f45956f6e83db53aebfcbd29c406b25f#.VENN7PmsUxM

ロシアの戦略概観―パトルシェフ書記の見解―( 拙稿2014/10/23)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39089075.html

ケーガン氏が述べるように、NATOは「テロとの戦争」では地中海を拠点として攻撃する態勢となっています。その地中海はロシアの支配が強化されており、そのことはNATO同盟にとって「テロとの戦争」で障害となってきます。米国やNATOの兵力が手薄の地中海への軍事派遣は、米国全体での部隊の不足と軍事予算の関係から困難です。

(その点では、西太平洋の戦域で中国が米軍を手こずらせていますが、これは地中海でのロシアと南シナ海での中国の連携プレーでしょう。)

米国とNATOの地中海への軍事派遣ができなければ、2015年11月のパリ同時多発テロの後に、フランスとロシアが見せたような二国間協力の気運の高まりが、ISのテロ事件が起きるNATO諸国間に広がり、ロシアとの関係強化による<NATO諸国の分裂>が起きることが考えられます。3月22日にはベルギーの首都ブリュッセルで連続テロ事件が起きました。

下記は、2015年11月のパリ同時多発テロの後の報道です。

フランスのオランド大統領は来週、米ロの首脳とそれぞれ会談し、過激組織「イスラム国(IS)」を掃討するための「大同盟」を求める見通しだ。

フランス、ISとの戦いで米ロと共闘望む アサド氏処遇で亀裂 (2015/11/18 ウォールストリート・ジャーナル)
http://jp.wsj.com/articles/SB10589961604557044643904581362373335814968

(プーチンがフランスのオランド大統領と並んで「フランスとロシアの同盟」を嬉しそうに口にするのをテレビで見て覚えていますが、彼の頭には常にNATOを分裂させる目的があります。しかし、このたくらみはNATO加盟国のトルコがロシア戦闘機を撃墜したことでいったんぶち壊しになり、プーチンは怒り心頭に発したとのことです。)

NATOが抱える「テロとの戦争」で、地中海という戦略的エリアを支配しつつあるロシアの存在感と発言力が増せば、シリア問題の最大の焦点ともいえるアサド政権の処遇で、<アサド存続のゴール>へもっていくことができます。
このような戦略地政学的な今の状況が、断続的に続いているシリア和平協議でのロシアによる強力な戦略的圧力となっています。

プーチンは非公式に、「オバマ大統領と大統領候補ドナルド・トランプにさえ、この戦略地政学的な敗北を受け入れるよう説得している」とケーガン氏は言っていますが、この戦略地政学的な敗北を受け入れて、アサド政権存続の条件を呑めということでしょう。


■関連記事:
ロシアのシリア撤退はカモフラージュ(AEI)( 拙稿 2016/03/22)
http://domoto-world.com/archives/1805920.html

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プーチンは地中海を支配しNATOを分裂させようと目論む(前編)

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ロシアによる、NATOを分裂させようとする地中海での活動が進行しています。

シリア和平協議は1月末から断続的に続けられており、3月14日にはプーチン大統領が、シリアから駐留ロシア軍の主要部隊を撤退するよう命じました。
そして3月24日には米国のケリ―国務長官とロシアのプーチン大統領、ラブロフ外相がシリア和平でのプロセスをめぐりモスクワで会談しています。

そこでこのシリア問題の焦点であるアサド大統領の進退ですが、この和平協議ではロシアの主力部隊を撤退させたプーチンが、強力な戦略的圧力を米国にかけているという背景があるようです。プーチンは、ただおとなしくなっているのではありません。

アメリカン・エンタープライズ研究所といえば、米国共和党系の代表的なシンクタンクですが、そこのフレデリック・ケーガン氏が、プーチンの見事な、地中海を拠点とした対NATO戦略を説明しています。

The new Cold War in the Mediterranean (「地中海での新しい冷戦」 アメリカン・エンタープライズ研究所 February 17, 2016)
http://www.aei.org/publication/the-new-cold-war-in-the-mediterranean/

ケーガン氏は中東の軍事問題の専門家で、ブッシュ政権のイラク戦争で成功した「サージ戦略」の立案者の一人です。この記事はフォックス・ニュースのサイトでも掲載されました。

ケーガン氏の分析は以下のようになります。

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(抄訳開始)
ロシアはすでに地中海のシリア沿岸のラタキアの空軍基地とタルトスの海軍基地を、シリア内戦下で強化することによって、「地中海での新しい冷戦」に勝利しつつある。

ラタキアの空軍基地とタルトスの海軍基地を拠点としてのロシアの軍用機と軍艦の活動は、すでにNATOの同盟国トルコを脅かしている。ところがロシアのこの動きは、やがてほかのNATOの多くの同盟国をも脅かし、それのみならずNATOを弱体化させ、最終的にはNATO同盟を壊すプーチンのより大きな策略の一環なのである。そしてそれは地中海でのロシアの恒久的な役割を獲得させることになるだろう。

地中海は四半世紀以上の間、「NATOの湖」であったが、米国がこのロシアの動きに対抗して軍備を地中海に配備できないと、いっそう悪いシナリオが現れてくるだろう。

突如として歴史は過去に向かって動いている(訳注-ロシアのシリア参戦での活動によって)。

冷戦時代、ソビエトはシリア、エジプト、リビアの地中海沿岸国のさまざまな港や飛行場をとおして中東地域に影響力を行使した。ソビエトが崩壊してこれらの軍艦や軍用機はすべて撤退したが、ソビエトに替わり、米国とNATOがこの地中海をソビエトの軍事配備よりも大幅に少ない軍事力で活動することを、ロシアは放任していた。

ロシアにとってアサドの独裁政権を助けることは決して主要な目的ではなかった。
ロシアのより広い戦略は、その(NATOに対する)戦略ポジションを建て直すことであり、アサド独裁政権を助けるのはその一環としてであった。

伝えられるところによれば、ロシアはシリアに対し高性能の対艦巡航ミサイルを売却し、高度な防空システムを配備させた。これらのシステムはアサドが敵対者を打ち砕くのを助けるばかりでなく、NATOから地中海の東で自由に活動する能力を奪うことを目的としている。

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プーチンはまた、NATOの南側の地域のすべてに沿って活動できる長距離型の制空戦闘機も配備しており、それらに高度偵察機も加え、高性能の長距離防空と精密照準爆撃の複合システムの中核を作りあげている(訳注-制空戦闘機は制空権の確保を主任務とする)。

NATOの関係筋によると、ロシアの北大西洋での潜水艦活動は冷戦時代のレヴェルに戻りつつある。その活動が地中海へ移動するのは時間の問題であり、ソビエト時代、その沿岸のタルトスの海軍基地は潜水艦にしっかりとしたメンテナンス設備を提供することができた。

ロシアの潜水艦隊の活動が地中海全体へと広がれば、NATOは安全ではなくなる。

このような海空域でのロシアの活動は、NATO同盟にとって「テロとの戦争」でも問題となるだろう。NATOは北アフリカ沿岸と中東の至る所のテロリストの標的を、地中海を拠点とした軍艦、潜水艦、戦闘機から攻撃する能力に長く頼ってきた。

<◆◆下記に続く>

後編 プーチンは地中海を支配しNATOを分裂させようと目論む
http://domoto-world.com/archives/1807237.html

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ロシアのシリア撤退はカモフラージュ(AEI)

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3月14日、プーチン大統領は、シリアから駐留ロシア軍の主要部隊を撤退するよう命じました。
このプーチンのシリア主要部隊の撤退については、海外のマスコミや専門家などによって、その目的と意図について推測がなされています。

シリア和平協議やウクライナ問題などでの外交的主導権などから論じる人たちもいますが、軍事的な側面からこの部分撤退の意味を指摘したものとして、アメリカン・エンタープライズ研究所のフレデリック・ケーガン氏の記事を紹介します。私の補足も交えます。

What the Russian ‘withdrawal’ from Syria really means (「ロシアのシリアからの『撤退』が本当に意味するもの」 アメリカン・エンタープライズ研究所 2016/03/16)
http://www.aei.org/publication/what-the-russian-withdrawal-from-syria-really-means/

ケーガン氏は中東の軍事問題の専門家で、ブッシュ政権のイラク戦争で成功した「サージ戦略」の立案者の一人です。この記事はフォックス・ニュースのサイトでも掲載されました。

ケーガン氏は、いまのロシアにとってシリアでの戦闘機や部隊を維持する<海外駐留は非常に出費のかかる>ことだと言います。そして燃料、弾薬、スペア部品などの供給物資の輸送をいったん止めて、多くの戦闘機・兵器の修理などのメンテナンスを、本国ロシアへ帰って行う方が都合がいいと言います。

本国へ戻ることはコストを削減できる、プーチンには浪費をする余裕がない。
Moving back to home base saves money, and Putin cannot afford to be profligate.

それゆえ、主要部隊の多くを<一時撤退>させたのですが、地中海沿岸のラタキアの空軍基地と海軍のタルトスの軍港では駐留を続ける方針です。さらにS−400や無人機などの防空システムもそのまま残し、臨戦態勢が短時間で復元できるような態勢をとっていると言います。

The only systems difficult to move rapidly back into Syria are those Putin is not moving—air defense systems like the S-400 and unmanned aerial vehicles (Defense Minister Shoigu said that Russia had 70 drones operating in Syria).

したがってこの「撤退」はデタラメであると指摘しています。

また、和平協議の枠外にあるイスラム国(IS)などは十分な戦力をいまだ維持しており、それらの武装組織がアサド政権を脅かすようなことになれば、撤退を即時解除し、空爆を開始すると示唆します。

そして最後にケーガン氏はこう述べます。

プーチンは、地中海沿岸の空と海の要塞(ラタキアとタルトス)を強化するだろう。
米国と西側は、プーチンの「撤退」という幻影よりも、そのような現実の戦略地政学的な結果・影響(地中海戦略)へ、はるかに多くの注意を払うべきだ。


中東専門サイト「アル・モニター」の1月12日付けの記事で、ブッシュ政権で国務省の上級アドバイザーを務めたポール・サンダース氏が、ロシアのシリア介入は泥沼化していると指摘していました。

Why Iran-Saudi fallout will be costly for Moscow (January 12, 2016 アル-モニター)
http://www.al-monitor.com/pulse/originals/2016/01/saudi-iran-dispute-russia-middle-east-foreign-policy.html

米国はイラク戦争では長期のイラク駐留を当たり前かのように続けていました。
ロシアの空爆は2015年の9月末から始まりました。ロシアは財政と国民生活が逼迫している状態が続いています。
ケーガン氏も指摘するように、参戦半年足らずでの主要部隊の撤退は、ロシアの財政的に非常に苦しい状況を表しています。

シリアのラタキアとタルトスを拠点とする、地中海でのプーチンの地政学的な戦略については、稿を改めて書きたいと思います。

■関連記事:
シリアはロシアにとってのベトナム戦争か (拙稿 2016/02/05)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39804497.html

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金正恩排除後の「米国朝鮮同盟」を中露に対抗させる(CSIS)

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核兵器や弾道ミサイル実験など、過激な言動が続いている金正恩には韓国軍によって「斬首作戦」が検討されているようです(「斬首作戦」は「Decapitation Attack」の英訳だそうです)。

斬首作戦、つまり暗殺作戦は、時々中東の指導者やテロ組織の幹部がオペレーションで殺害されるニュースがあります。JbPressで織田邦男氏が、この韓国軍による斬首作戦について記事を書いています。

「斬首作戦」に慌てる北の独裁者、核発射の危険性も (JbPress 2016/03/14)
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/46318

暗殺作戦計画は父親の金正日の時もありましたが、今回の記事では「斬首作戦」または権力闘争、体制崩壊などによって南北朝鮮統一の方向へ事態が進み始めた場合の話を取り上げます。

米国の戦略国際問題研究所(CSIS)と韓国の東アジア研究所(EAI)が共同で組織する「CSIS-EAI 朝鮮統一会議」には米国国務省なども関わっているようですが、CSISのHPでは時おり南北統一に関する記事を掲載します。

3月14日には東アジア担当の元副国防次官補(2012-2015年)であったデイヴィッド・ヘルヴェイ氏が、CSISのHP上に『統一朝鮮と米国の同盟を計画するための指針』と題する記事を掲載しています。

Principles for planning a US alliance with a unified Korea (戦略国際問題研究所 2016/03/14 )
http://csis.org/publication/pacnet-27-principles-planning-us-alliance-unified-korea

このなかでヘルヴェイ氏は統一朝鮮と米国の同盟を計画するために4つの指針を挙げています。そのなかでは「共通の価値と理想」や「主権の尊重と防護」などとして、開かれた民主主義や自由市場経済、人権尊重、法の支配など、いわゆる西側の価値観を共有することを指針として挙げています。

これは統一朝鮮に隣接する中国とロシアの国家の価値観に反するもの、対抗している価値観ですが、元副国防次官補のヘルヴェイ氏は、指針の第2番目で次のように言っています。

北朝鮮の政権がなくなった将来へ向けての計画では、「米国朝鮮同盟」は、いまある抑止力、軍事的能力、軍事的即応性の土台を壊したり弱体化したりするような事をすべきではない。
Second, in planning for a future without North Korea, the alliance should do nothing that undermines the deterrence, military capabilities, and readiness needed today.

また第3番目の指針では、「米国朝鮮同盟」はこの地域での領土拡張主義(侵略や強制)による紛争があった場合には、「米国朝鮮同盟」はこれに対処するものであることを、間接的な言いまわしで書いています。

Planning, in this context, should include diplomatic efforts to assure China, Japan, and Russia that a future US-Korea alliance would respect territorial boundaries and support regional and global stability. This does not mean, however, the alliance should not respond to aggression or coercion that disrupts the regional order.

この記事で、「米国朝鮮同盟」が中国とロシアを念頭においた紛争に軍事的関与をすることを、直接的な言い方で書いていないこと、また、日本が「米国朝鮮同盟」に協力的な関係をもつことまで明確に書かれていないことは、この記事が最初に韓国の「コリア・タイムズ」に掲載されたため、韓国人の国民感情を考慮したからであると思われます。

この記事のロング・バージョンは、米国国防大学から下記URLで閲覧することができます。

Korean Unification and the Future of the U.S.-ROK Alliance (INSS February 2016)
http://ndupress.ndu.edu/Portals/68/Documents/stratforum/SF-291.pdf

■関連記事:
朝鮮半島統一を描く米韓とロシア ( 拙稿 2015/01/22)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39243527.html

北朝鮮の崩壊を恐れるな―リスクを上回る半島統一の恩恵に目を向けよ (フォーリン・アフェアーズ日本版 2014年7月号)
http://www.foreignaffairsj.co.jp/essay/201407/Terry.htm
【全文】:
http://www.asyura2.com/14/kokusai9/msg/327.html

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ロシア製Su-35配備で中国の南シナ海での優位性が高まる

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戦略国際問題研究所(CSIS)が年3回発行する、ユー・ビン氏の中露関係のレポートの1月分を部分的に読んでみました。

Comparative Connections v.17 n.3 - China-Russia (戦略国際問題研究所 JAN 15, 2016)
http://csis.org/publication/comparative-connections-v17-n3-china-russia

この中にロシアが中国への売却契約を結んだスホイ35戦闘機(Su-35)についての報告があります。中国はこのSu-35の導入によって、軍事的にいくつかの戦略目標を達成するための強力な手段にしようと考えています。それは尖閣問題や南シナ海などでの軍事的優位性の獲得です。

Su-35は第5世代戦闘機である米国のF-22やF-35と能力的に非常に接近しており、Suシリーズのどの機種、中国の同タイプのどの機種よりも非常に抜きん出ている。これはSu-35が中国に南シナ海での優位性をもたらすであろう事を意味している。

(中略)中国空軍の航空装備の専門家であるFu Qianshao氏は、「Su-35はその最高度の機動性能により、米国のF-35ライトニング兇鮠絏鵑襪曚表淑強力である」と述べている。(上記レポートより)

Su-35の売却契約は全部で24機で、製造元のコムソモルスク・オン・アムールによれば、ロシアは最初の4機を2016年中に引き渡し、残りを2018年の終りまでに中国へ納める見通しです。

The Russians will deliver the first four Su-35s to the PLA in 2016 and the remainder are expected by the end of 2018, according to the aircraft’s Russian producer, the Komsomolsk-on-Amur Aircraft Production Association.

同様の内容がタス通信を通じて2月に報道されています。

中国に最新鋭戦闘機4機供与へ=日本の安全保障に影響も−ロシア (時事通信 2016/02/19)
http://www.jiji.com/jc/zc?k=201602/2016021900875

そして3月11日のNHKの報道では、

南シナ海で中国が造成する人工島について、アメリカの情報機関を統括する国家情報長官は、早ければ年内にも戦闘機などを配備できるインフラや施設が完成しこの海域で攻撃的な軍事力を素早く展開できるようになるとして、強い警戒感を示しました。

中国の人工島 年内にも軍事施設完成 米が警戒感 (2016/03/11 NHK)
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160311/k10010439321000.html

この報道記事に、南シナ海の人工島に「年内にも戦闘機などを配備できる施設が完成し」とありますが、上で述べたように人工島の施設の完成に時期を合わせて2016年からSu-35を配備することが可能です。

それにより、ユー・ビン氏が予測しているように南シナ海での中国軍の優位性は高まり、軍事関係者が指摘するように、いずれ南シナ海上空に防空識別圏が設定される可能性は高いと思います。

■関連記事:
北東アジアでの中国・ロシアの戦略的協力―日米同盟 VS 中露の戦略的協力―( 拙稿 2015/6/26)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39461397.html

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米国上層部は中国経済を「危機的状況」とは見ていない

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Figure 5- Chinese Spring Festival Travel

上のグラフは、2012から2016年(2016年は推定値)の春節(旧正月)期間中の中国人の旅行者数(国内外合計)を表すもので、旅行の数が左軸(延べ百万人回)、その増加率(前年比)が右軸になります。

このグラフは米国の米中経済安保調査委員会が毎月発行している、中国経済についての3月4日付けのレポートからのものですが、2012年以降、中国人の旅行への消費総額が年々増えている事が窺えます。

中国国家観光局は2016年の国内個人旅行の数が前年比で15.7%増加し、3億200万人回に達すると推定している。また春節期間中の国内旅行は、2012年以来2桁台で増加している。生活水準の向上と旅行者インフラがこの傾向を速めている。

MARCH 2016 ECONOMICS AND TRADE BULLETIN (米中経済安保調査委員会 March 4, 2016)
http://origin.www.uscc.gov/Research/march-2016-economics-and-trade-bulletin

このところ東京などでの中国人観光客の爆買いがよく報道されますが、こうした爆買いは、米中経済安保調査委員会などが指摘しているように、近年の中国人全体の生活水準の向上を反映しているものと言えるでしょう。爆買いの背景としては中国人の所得が増えていることもニュースなどで挙げられています。

以上のことは中国経済の状況の一例ですが、中国経済の現状をポジティブに評価する見方は、ドイツ銀行のそれなど最近のニュースでも少数派ですがあります(下記リンク記事)。

中国経済の先行きに明るさか、過度に悲観的な見方に修正の動き (財経新聞 2016年3月4日)
http://www.zaikei.co.jp/article/20160304/296575.html

中国経済の専門家スティーブン・ローチ氏は、1月26日付けの「中国についての誤った警報」と題する記事で、中国は、金融市場などでの失敗や問題を抱えながらも、第三次産業への構造転換や都市部での雇用創出で着実な成功を収めており、消費主導の経済モデルへの構造改革が進んでいると主張しています。

False Alarm on China (スティーブン・ローチ JAN 26, 2016)
http://www.project-syndicate.org/commentary/china-crisis-false-alarm-by-stephen-s--roach-2016-01

(ローチ氏は、元モルガンスタンレー・アジア会長。現エール大学ジャクソン研究所シニア・フェロー。)

ローチ氏は中国経済の現状について、「失敗や後退(setbacks)と危機(crises)は同じものではない」と指摘していますが、IMFも、そして米中経済安保調査委員会などや米国上層部の専門家なども、ローチ氏と同じように、中国経済は「失敗や後退が見られるが、危機的状況ではない」という認識のようです。

米国主導のIMFは、中国人民元をSDRの構成通貨と決定しましたが、その事がいま言ったのと同じような中国経済へのIMFの認識をよく表わしています

米国上層部に位置する人物で、中国の通貨問題について権威ある専門家が中国経済と人民元をどのように考えているかという事については、読みかけた文献があるので、近いうちに記事にしたいと思います(英文PDFで何十ページもあるので部分的に読む予定でいますが)。

■関連記事:
IMFは中国の構造改革にポジティブな評価をしている ( 拙稿 2015/9/9)
http://blogs.yahoo.co.jp/bluesea735/39592486.html

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張 良

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